第25話  遺された手紙

「時間のサウナ」が新たな伝説として宿の一部になった後、温泉宿では日々多くのゲストがその奇跡を体験しに訪れていた。しかし、ある日のこと、サラが図書室の整理をしているとき、古い本の間からひときわ古ぼけた封筒を見つける。封筒には精巧に装飾された封印が施されており、未だ開封されていない状態だった。


サラはミコトとレオを呼び、一緒に封筒を開けることにした。封筒から出てきたのは、温泉宿の創設者が書いたと思しき手紙だった。その手紙には、宿とその設立にまつわる心温まるエピソードと共に、未来の宿の管理者たちへのメッセージが綴られていた。


「我が愛する後継者たちへ、

この宿が設立されたのは、人々が心から安らげる場を持つためです。過去の苦労や未来への不安を忘れ、この温泉の恵みを全身で感じてほしいと願っています。もし、あなたがこの手紙を読んでいるならば、私の願いは叶ったのでしょう。」


手紙はまた、宿に隠された秘密の場所のヒントも含んでおり、「最も静かな夜、星が輝く下、真の宝が宿る場所へと足を運べ」との指示が書かれていた。ミコトたちはこの謎の場所を探し出すことに決め、手紙に記されたヒントに従って宿の敷地内を探索し始めた。


数晩にわたる探索の後、彼らは宿の古い庭園の一角に隠された小さな祠を発見した。祠の中には創設者が遺したと思われる、宿の歴史を詳述した日記と、宿に受け継がれてきた古い宝石が納められていた。


宝石は特別な力を持ち、それに触れることで心が穏やかになるといわれていた。ミコトたちはこの宝石を大切にし、特別な日や重要なイベントでのみゲストに公開することにした。


この発見は、温泉宿に新たな伝説をもたらし、宿の魅力をさらに高めた。手紙を通じて創設者の願いを受け継ぎ、ミコトたちはこれからも宿を訪れるすべての人に、平和と癒やしを提供し続けることを誓った。


「ピクセル湯けむり慕情宿」の物語は、過去からのメッセージを未来へと繋げ、訪れるすべての人々に心の安らぎを与える場所として、その歴史を紡いでいくのだった。

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