第18話 さよならクリオ

クリオの冷水の精霊としての魅力が、温泉宿に新たな彩りをもたらしてから数週間が経った。彼の作り出した氷の彫刻や冷たい水のプールは、宿を訪れるゲストたちに冬の特別な体験を提供し、多くの人々の心に残る思い出となっていた。


しかし、冬も徐々に終わりを告げ、温泉宿の周囲の雪が溶け始める頃、クリオはミコトたちに別れの時が近づいていることを告げた。「僕のいる場所は、もうすぐこの地を離れ、冷たい水の国へと戻らなくてはならないんだ。」クリオの声には寂しさと感謝が溢れていた。


ミコトと仲間たちはクリオの決意を尊重しつつも、彼との別れを惜しんだ。「クリオがいなくなるなんて、想像もしたくないよ。でも、君が決めたことなら、僕たちは応援するよ」とレオが力強く言った。


別れの前夜、ミコトたちはクリオを囲んで、彼が温泉宿にもたらした美しい瞬間を振り返るパーティーを開催した。サラは、クリオのために特別な魔法の飾りを用意し、「この飾りが君を冷たい水の国でも守ってくれますように」と願いを込めた。


ピクシーと他のピクセルキャラクターたちも、クリオに自分たちが描いた絵や、宿の写真を贈り、「いつかまた会える日を楽しみにしているよ!」とメッセージを残した。


クリオは、ミコトたちの温かな言葉と心からのギフトに深く感動し、「ありがとう、みんな。ここで過ごした時間は、僕にとってかけがえのない宝物だよ。冷たい水の国でも、この温かい思い出を忘れることはない」と感謝の言葉を述べた。


翌朝、クリオは宿を離れる準備を整え、ミコトたちと最後の別れを交わした。彼は宿の門をくぐり、冷たい水の国へと戻る旅に出た。ミコトたちはクリオの後ろ姿を見送りながら、彼との再会を心から願った。


クリオの旅立ち後、温泉宿は再び日常を取り戻したが、彼が残していった氷の彫刻や彼との思い出は、宿の中で大切にされ続けた。そして、ミコトたちはクリオの存在が教えてくれた、異なる世界との出会いの大切さと、友情の絆を胸に新たな春を迎えた。


「ピクセル湯けむり慕情宿」の物語は、別れと再会を繰り返しながら、常に新しい出会いと冒険を迎え入れていく。

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