花嫁の装束

月岡夜宵

第1話

 結婚式は新郎新婦の初めての共同作業だと世の人々は思うだろう。

 だがマリアンヌにとっては今から向かうのは戦場であった。気持ちは死地へ赴く騎士そのもの。彼女は誇りと名誉とをかけて式へ挑もうとしていた。

(あなたは受け止めてくれるでしょうか)

 両開きの扉が、開く。

 眼と眼が合う。


 友人らと談笑していたはずの新郎の顔からすべての色が抜け落ちていった。


   *


 花嫁となるマリアンヌが式場へ現れた時、会場は騒然とした。それもそのはず、彼女は不吉だとされる黒色をあしらったドレスに身を包んでいたからだ。周囲の招待客とともに夫ギリアムもまた言葉を失い立ち尽くしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る