まさか、あなたですか?

ばたこ

第1話

夜月怜愛は中学2年生の女子。

私立中学校の寮生で、一匹狼タイプ。

読書とポテチが好き。

登校中、交通事故に巻き込まれ、2週間自宅療養をしていた。



療養を終えてやっと帰寮。

もう目と鼻の先には数週間離れた寮だ。帰ったら何しようかな?

平日で誰もいないはずだからのんびり過ごして明日から頑張ろう。

ふと自分の4人部屋を思い浮かべた。

送ってくれた母と別れて寮に入ると寮母さんと中2女子寮生担当の先生 橘 杏先生が出迎えてくれた。

「れいちゃん、お帰りー」

「れーちゃん、元気なった?」

寮母さんが笑顔できいてきた。

「はい!」

笑顔で答え、一通り会話を終えると、橘先生の顔が笑顔から真面目な顔に切り替わった。

「れいちゃん。申し訳ないけど荷物片付けたら事務所に来てくれる?」

「わかりました。」

なんだろう。橘先生があんな真剣な顔をするなんて。きっと何かあったに違いない。

なんか私悪いことしたっけ?

とりあえず靴箱にいって寮内で履き古しているスリッパに履き替えて荷物を片付けに居室へ向かった。

2階の居室エリアで私は違和感を覚えた。

女子寮生全員部屋にいる。部屋の前に全員分のスリッパがある。だけどいつも騒がしい感じなのにしーんとしている。

自分の部屋に入ると部屋員の子全員がベットの中にいた。

私が入ってきたのに気づいた詩音ちゃんが

「おかえり〜」

といってくれた。声をかけてくれたのは彼女だけだった。

いつも下品な話をして、時には劇をする騒がしい部屋なのにしーんとしていた。

なんかあったなと思いながら荷物を片付けて1階の事務所へ行った。

そこにはさっきは感じなかった異様な光景がすぐ目に入った。

女性の警官がいたのだ。

私が法に反することをいつした?交通事故のことをききにきたのか?

ドキドキしながら橘先生に声をかけた。

「先生。」

「れいちゃん片付け終わったの?」

「はい。一応。」

そう答えながらも私の目は橘先生ではなく女性警官の方を向いていた。

それを察した橘先生は焦りながらいった。

「あ、こちらの方は警察の方だよ」

女性警官がいった。

「夜月怜愛さんですね。名前は伺っています。わたくし、中央警察の新木です。この寮で起きた事件のことについて捜査しています。」

この寮で起きた事件?なんじゃそりゃ

「れいちゃんにはまだ話してないよね。今から説明するから、とりあえず面談室に行こうか。」

橘先生が滅多に使われない寮の面談室を使うというからなんとなくワクワクしていたがそれ以上に事件のことが気になった。

私と橘先生と女性警察官の新木さんは面談室へ入った。

全員が席に着くと橘先生がこの量で起きたことについて説明し始めた。

「実はね、昨日この女子寮で殺人事件が起きたの。」

「さ、殺人?ですか?」

「そう。もしかしたら自殺かもしれないけど」

いやいや、ちょっと待って。寮から死者がでるって何事?

「そうなんですね、、、」

「そこで誰が関係しているのかわからないかられいちゃんに事件の真相を突き止めてもらいたいんだよね。

れいちゃんは事件に直接関係してるとは思えないからね。あ、だけどしたくなかったらしなくてもいいよ。」

なるほど。先生が真相を調べるのには限界があるってわけか。

確かに私は自宅療養中だったから事件には全く関係がないだろう。

いや待てよ。これを引き受けたら内申点も多少はあがるだろうし(というのは冗談で)、なんといったって楽しそうじゃないか。

ここは引き受けるべき!

「わかりました。最善を尽くして取り組みます。」

そういうと橘先生と新木さんの顔に少しだけ安心した顔が見えた。

「ありがとう。」

橘先生は感謝の言葉を口にした。橘先生は新木さんに目線を向け、新木さんがそれを受けた。

「ではまず。事件の概要について説明します。

殺害されたのは中学2年部屋番号24の今田梨華さん。昨日の午前7時頃に居室内で窒息死した模様です。ちなみに目撃者はおらず、まだ手掛かりは掴めていません。」

今田梨華。隣のクラスの女子か。まだ同じクラスにも同じ部屋にもなったことがない。

一応相槌を打った。新木さんは続けた。

「そこでまずお願いしたいのは中学2年生の観察です。なにか変な動きをしている人がいたら教えてください。情報共有は毎週日曜日の午前9時にしましょう。」

はあ。勝手に話を進められた。その時間、私の大切な紅茶と読書の時間なんだが。まあ反抗しない方がいいことは一目瞭然。

「わかりました。」

「れいちゃん、手間暇かけるようなことお願いしてごめんね。」

「いえ。大丈夫です。できる分だけ頑張ります。」

そういって私は面談室を後にした。

まず中2女子寮生は16人。部屋ごとに順番に思い浮かべる。中2のエリアは部屋番号21〜24。ちなみに中3が1階にある15〜20で、中1が2階の中2と同じフロアにある25〜30。1〜15は空き部屋であった。

部屋番号21

武藤優佳、青木茜、石川秋葉、吉野凛。

部屋番号22

夜月怜愛、瀬尾奈々、佐々山詩音、倉本彩乃

部屋番号23

八重桜優美、衛藤舞花、盛岡花、酒井愛玲奈

部屋番号24

三浦紗季、寺田春菜、今田梨華、上野美香

一体誰なんだろう。

今田さんの部屋員は?寺田さんは今田さんと仲が良かったし、性格も悪くない。三浦さんは血が怖いからっといって絶対医療ドラマをみない。上野さんは性格こそ悪いがどうも人を殺す人だとは思えない。いやわかんないかも。上野さんはお嬢様気質でよく盛岡花を引き連れているイメージ。まさか、上野さんと盛岡さんの共謀、、、。

いやこれはまだ候補でしかないし、盛岡さんは真面目なところがあるからいくら上野さんの命令だとしても従わないだろう。

一応私の中で上野さんは候補の一人だ。

他の部屋の人は、、。思い当たるのは何人か浮かぶ。殺人ドラマが好きで、なおかつ今田さんと仲が悪かった八重桜さん。いつも何しているかわからない青木さん。今田さんと一時期喧嘩しまくっていた武藤さん。武藤さんの取り巻き連中。

もう候補が多くなりすぎて全員を疑ってしまう。

ふと頭の中にひとつの考えが思い浮かんだ。窒息死でなくなったのなら紐で殺されたか、なんらかの跡が残っているはずだ。

私はどのような形でなくなったのか詳しく聞こうと思った。

きっとまだ新木さんはいるはずだ。

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