第45話 ゼレニスの破界とオベリスクの奥の手
〇シェーンブルン子爵領 ゼレニス教会支部 本堂
「よぉ!バウディ司祭久しぶりだな、覚えてるか?俺の事」
腰を抜かし地べたをバタバタと叩き後ろに逃げようとする司祭にゆっくりと歩み寄る
「し、知らぬ!お前等しらぬ!!!」
「だ、そうだ、女神ゼレニス様よぉ~! いや・・・・・破界樹 ゼレニス」
【世界に仇成す者よ・・・確かエストと言ったか・・・】
「へぇ~俺みたいなゴミ虫を覚えてくれていたとは感動だねぇ~」
「きっ貴様ぁぁゼレニス様に対し不敬、不遜、罰当たり・・・死んでお詫びせよ!!」
さっきまで俺に対し恐怖していた司祭は女神の声が聞こえた途端に強気になる・・・ヤレヤレだぜ
「お前さぁ後でちゃんと殺してやるから黙っとけよ」
「!?!?ゼ、ゼレニス様・・このゴミ虫は貴方様の忠実なる信徒である私に向かって言ってはならない事を申してます!!即刻天罰を!!」
女神に向かって祈りをささげるバウディの表情は必死だ・・傑作だぜ~
「ミホーク、後で皆で楽しむ為のオモチャにするから、そこで壊れてる貴族の僕ちゃんと一緒に木に括りつけて張り付けにしとけ」
「御意!!」
ミホークが手を翳すと背後の床から植物の弦が生えて来て、女神象に必死で懇願するバウディを絡め取り、次に両親の黒い破片の前でエヘエヘと涎を垂らし笑っているカミルも絡めとった
「グゥゥゥゥ放せぇぇ私は教会本部の司祭だぞ!!いずれは法王になる男だぁぁ無礼は許さん!!」
「エへへへ、エへ、エへ」
俺はそんな連中を無視して、女神象の前に立ち女神を見上げる
「とか言ってるけど?アンタの忠実なる下僕なんだろ?助けなくて良いのか?」
【助ける?我は神なるぞ、力を授けてるだけでも十分である、駒の一つを救う為に振るう力は無い】
「まぁ、そうだよなぁ~んじゃ女神ちゃんのお許しも出たんで、処刑場に運んで貰おうかな?」
女神からの言葉に絶句し顔を青くする司祭
「め、女神様ぁぁ何卒・・何卒お助けをぉぉ私めはぁぁ」
うるさい連中を教会の外に退場させ俺は女神と再び対峙する
「久しいな・・ゼレニス・・・俺は戻ってきたぞ?お前とお前の作り出した世界を潰しになぁクククク」
【世界に仇成す・・・我の世界に不要な輩・・・ユリシーズに誑かされた哀れな存在】
「!?ユリシーズ様と主様を愚弄する事は許さぬえ!!!【鎌鼬】(かまいたち)」
「うぉぉぉ!!【森槍】(しんそう)」
ダキとミホークは怒りを堪えきれずゼレニスの像に攻撃を仕掛ける・・・
【たかがユリシーズの破片共が我に牙を剥くとは、身の程をわきまえよ】
風の刃はゼレニスの像の前で霧散し、樹木の槍は象に届く前に阻まれへし折れる
「「!?」」
【愚かなり・・・神に逆らう愚かさを身を以って知るが良い】
ゼレニス象の目が強く輝くと、ダキとミホークの目の前の空間に亀裂が入る
「何ぃ!?」「何やの!?」
「不味い!」
【時空爆裂】(じくうばくれつ)
俺の放った特殊な精霊術によりダキとミホークの前に現れた空間の亀裂はその周囲の空間ごと爆散した
「!?」
そして爆散した空間が急速に元に戻ろうと周囲の空間を吸い込む・・・その力は凄まじく教会内の机の破片や倒れた騎士達の死体を吸い込み圧縮していく
ミホークとダキは俺の作り出した白い球体の空間の中に入っておりプカプカと空中を漂い吸引の影響を受けてない
【ほう・・・我の破界を空間ごと切り取り消滅させるか・・】
「主様・・・今のは・・」「ミホークも見た事無い精霊術・・・」
「無事か・・・・お前等」
二人の方を振り返ると・・・
「!?主様!?その眼と口からも血が・・・それに右手と左手も・・・」
「気にするなじきに収まる」
【成程・・・それが貴様の奥の手という訳だな、正に世界に仇成す者の成せる業】
「ゼレニスよ、我はオベリスク(悪霊の王)のロン、貴様を滅し世界を蹂躙し、この混沌の世界に終焉をもたらす者だ」
【よかろう・・・オベリスクとユリシーズの子らよ我が元に貴様の牙が届くか、しかと見届けよう】
「ああ、楽しみに待ってろ・・・貴様にも地獄の苦しみってのを御馳走してやるぜクソ女神ぃぃアハハハハ」
教会内に響き渡る俺の高笑いの中、女神像の瞳の光が収束し完全にゼレニスの気配が消える
・・・・・・ドサッ
俺はそのまま後ろに倒れる込んだ
「!?主様ぁぁ!!」「ロン様?!」
俺の元に駆け寄ると、ミホークが俺の右目に向かってファリスに呼びかけているのが聞こえる・・
その呼び掛けを聞きながら、俺は静かに意識を失う
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