異世界人……星々煌めく魅惑の宇宙へ
第6話・最初の立ち寄る星は怪獣惑星【グレイヴヤード】
イケニエが言った。
「これが、宇宙か……想像していたのと違うな、星は天井に開いた穴だと思っていた」
異世界から宇宙へと飛び出した。宇宙を航行する超異世界女型要塞【プルシャ】姉型の展望台で、モニターに映し出される星々を椅子に座って眺めているカミュとイケニエの姿があった。
巨大モニターに映し出される、星々にはプルシャのサービスで光りの線で結ばれた異世界星座の形と、解説が流されていた。
《『南の戦斧座』は『北の試験管座』『西の魔女の帽子座』と並ぶ南天を代表する一等星の星座の一つで……》
プルシャの解説を聴きながら、イケニエがカミュに訊ねた。
「ずっと気になっているけれど……前にオレと会ったようなコトを言っていたけれど、どこでオレと会った?」
「本当に忘れたのか、それもしかたがない……おまえ、転生者なんだよ。一つ前の前世でも『自分には本当は秘めたスゴいスキルがあって。そのスキルを利用して自分をバカにして追放した連中に復讐のザマァして、女を服従させる力でハーレム作って』みたいなコトを言っていた」
「オレ転生者だったのか? 薄々そんな気はしていた」
「あぁ、バナナの皮でスッ転んで後頭部を強打して死んだとか言っていたな……その時もムカついたから、一発殴って自堕落なおまえに『おまえに特殊な隠しスキルがあって、異世界でなんの努力もしないで。楽して成り上がっていくなんざ、ネコが背中で光合成をするより難しい!』って説教してやった」
「それで、その時のオレはなんて答えたんだ?」
「次の来世では、ちゃんとしますと約束した……それが、生まれ変わっても前世の反省もない自堕落で、努力もしないクズ人生を送っていたからオレは、おまえを殴った」
「そうだったのか……前世のオレ、どうしょうもないクズ転生者だな」
イケニエの言葉を否定しないカミュ。
「そうだな」
「次はちゃんとやるから……約束する」
「期待してもいいんだな、この世界を創ったのはオレだから、時間はたっぷりと……おっと、口がすべった」
カミュはイケニエの目元を手の平で押さえると「忘れろ」と言って、イケニエは忘れた。
◇◇◇◇◇◇
その時、展望室にプルシャの声が聞こえてきた。
《みなさん、ブリッジに集合してください……目的地の星が見えてきました》
カミュとイケニエがブリッジに行くと、他の仲間も集まっていた。
巨大スクリーンには、青い地表に白い網目の筋が走る惑星が映し出されていた。
ビキニアーマー姿のプルシャが言った。
「怪獣惑星【グレイヴヤード】です、異世界の人が宇宙を実感するには丁度いい惑星でしょう……着陸します」
超異世界女型要塞は、ゆっくりと惑星に降下していった。
◇◇◇◇◇◇
グレイヴヤードは、陸海空と巨大生物が
大地に立ったラチェットに、ブレスレットに加工したガルムの外部端末金属片が言った。
《オレたちは、船内で休んでいるからな……未知の惑星を堪能してこい、この星の怪獣は滅多に襲ってこないからな》
「ガルムは一緒に来てくれないの?」
《宇宙で甘えるな! 宇宙空間では誰も助けてくれないぞ》
◇◇◇◇◇◇
一行は、
ガルムの代わりに、仮想体のビキニアーマー姿のプルシャが同行するコトになった。
ビキニアーマーで先頭を進む、プルシャの魅惑的なヒップを眺めながらイケニエが、にやついていると。
樹上からスルスルと糸で降りてきた、等身のクモの怪獣がイケニエを捕まえて木の上に運ぼうとした。
イケニエの後ろを歩いていたカミュが、クモを説得してイケニエを引っ張って取りもどす。
「はいはい、食べない食べない、これはエサじゃない……こんなもん食べたら腹壊すぞ」
「こんなもんって……オレは、いったいなんなんだ?」
ジャングルを進んでいたラチェットは、木々の隙間から銀色に輝く人工物を発見した。歩きながらラチェットは、ブレスレットのガルムに聞いてみた。
「なにか、金属っぽい建物みたいなのが見えたんだけれど?」
三ツ目が言った。
《あれはねぇ、ロボット怪獣がビルに擬態しているのよ……ウフッ》
「ロボット怪獣? ガルムと同じ?」
《あんなガラクタと一緒にするな! 1ツ目、ラチェットに説明してくれ》
《ロボット怪獣というのは、自意識を持たずに操られて動く、からくり人形のようなモノです……三ツ首のガルムには、自我があり自分で考えて行動します》
「そうだったんだ」
◇◇◇◇◇◇
先頭を進むプルシャが足を止めて、後方のカミュたちに止まるように無言で示す。
プルシャが小声で言った。
「どうやら、タイミングが悪い時に惑星に来てしまったようです」
プルシャが見ている前方の開けた場所で、耳が尖った鈎鼻の男たちが、小型怪獣の首にロープをかけて檻へと引っ張り出す入れようとしていた。
男たちが檻に入れようとしているのは、水棲首長竜のような姿をした植物怪獣の子供だった。
嫌がっている植物怪獣の子供の近くには、ロボット型の操縦重機があり、檻に入って動きが停止した小型怪獣たちを、次々と運搬宇宙船に運んで乗せていた。
ブレスレットのガルムが言った。
《ゴブリン星人の密猟者だ……あの檻は生物の動きを生きたまま凍結させる捕獲檻だ》
カミュがプルシャに小声で訊ねる。
「密猟者ってのは、ぶっ倒してもいい連中なのか?」
「ええっ、悪党です」
「神は死んだ、世界はは不条理で満ちている……全員で出ていってあの、人数の密猟者をぶっ倒すのは得策じゃないな、未知の地形だとこちらが不利になる……誰と誰が密猟者をぶっ倒す?」
シノギ・狂四郎、リョウガン・ヤゲン、そして腐れ聖女のドール・ジが挙手をする。
館長のメリノが、この三人で密猟者たちを懲らしめてこいと、送り出しのハンドサインをする。
ジャングルの中から現れた、異世界の服装をした狂四郎たち三人にゴブリン星人の密猟者たちは最初は少し驚いたが、すぐに光線や光弾のライフル銃を手に身構えた。
リーダーらしき大柄のゴブリン星人が、狂四郎たちに向かって怒鳴る。
「なんだぁ、おまえたちは!」
ドールがいつもの、お気楽な口調で返答する。
「あはっ、異世界人でっす……あはっ、モンスターボールのカッパちゃんお願い」
その、小馬鹿にしたような口調に激怒するゴブリン星人たち。
「やっちまぇ!」
光弾と光線が発射される、モンスターボールのカッパが、頭の皿で光弾や光線を弾く。
「カッパぁ!」
カッパの皿で弾かれた光弾と光線が、ゴブリン星人の光学ライフル銃を弾き飛ばした。
「てめぇ、異世界人!」
「覚悟しろ!」
蛮刀を引き抜いたゴブリン星人に向かって、日本刀を抜いたヤゲンが言った。
「オラはオークの医者だ、オークの病気と傷を治すのが仕事だぁ、おまえたちはオークじゃねぇ、叩っ斬ってやるぜら! 執刀」
ゴブリン星人数人を叩っ斬る。
ヤゲンの手に切断された臓器が握られる。
「オラは医者だ……患部だけを切開して取り除いたぜら、しばらくは傷口が痛むぜらが、我慢するぜら」
別のゴブリン星人たちが、居合斬りに構える狂四郎に突撃する。
狂四郎の一閃が、ゴブリン星人たちを輪斬りにして、ストン、ストンと元の状態にもどる。
「剣技『ダルマ落とし』寸断した真ん中の輪切り部分を蹴り抜けば、おぬしたちは死ぬでござる……じっとしていれば傷口が癒着して助かるでござる」
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