第55話 邪神召喚

「美味しいね。」


パエリが口の周りをジャムでベトベトにして言う。


上機嫌だからいいか。


アスタロトに連れてきてもらったクレープ屋さんは馬車の荷台でクレープを焼いて販売する、今流行りのキッチン馬車だ。


大繁盛していて1時間ぐらい行列に並んだ。


「待った甲斐があったね。」


そこにカブス達の集団がやって来た。


「すごい人気のお店なんだ。」


ムールが言う。


「ちょっと違うみたい、お向かいの建物を囲み始めたわ。」


サーフラが指差す。


「あの子供達見覚えがある。」


「カブスじゃん。」


「おーい、カブスー。何してんの?」


パエリが駆け寄っていくので仕方なくついていく。


カブスがパエリの声に気がついて振り返る。


「え?勇者様?なんで?」


すすすごい、勇者様にはなんでもお見通しなんだ。

僕達を守りにきてくれたんだ。


「勇者様ー。ありがとうございますー。」


「僕達頑張ります。」


「おーっ、がんばれー。」


「パエリってば、あの子達が何を頑張るか知っているの?」


サーフラが聞くけどわかっていないに決まっている。


「あの子達これから盗賊団に囚われた子供の奪還に行くのよ。」


ジュネがカブス達を守っているワーリク侯爵家の従者に聞いて来た。


「今回の盗賊団はあの人達だけでは手に負えないよ。」


アスタロトが言う。


「ふーん、じゃあちょうど良かったじゃない。」


パエリは偶然だと思っているんだろうな。


「ねえねえ、どーしたらいい?あの建物ぶっ飛ばしたらいいの?」


「まてまて、それは絶対ダメ。」


「で、今回は何がまずいの?」


アスタロトが言うにはあの建物を拠点にしている盗賊団は邪神を信仰する団体とのつながりがあるらしい


すでに邪神の一部は復活していて教団と盗賊団を操っているからその邪神と戦わなくちゃいけない。


確かにそれだと子供や普通の人達の手に負えないね。


「聞いてた?わかった?ここはちょっとオレ達に任せなさい。」


ムールは話しを聞いていたカブス達に言う。


「はーい、わかりましたー。勇者様ー。」


聞き分けのいい子だね。


だけど話しをしたのは勇者じゃなくてオレだから。



ソナーの様に魔力を薄く引き延ばして対象の建物にぶつける。


木や石など建築資材などを選別的に透過して動きや体温に反応して建物の中にいる者を検知する。


建物の1階には20人程の盗賊、

2階や3階などの上階には誰もいない。


ただ、地下に広い空間があり人間っぽいのが1人いてその周りに無数に弱々しい生体反応がある。


「パエリ、盗賊達は一階の大広間にいるからそっちを片付けて。」


「ムールは地下に行くのね。」


パエリにしちゃ察しがいいね。

などと考えながら地下の広い空間に転移した。

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