第14話 キルハム侯爵
「盗賊に化けての襲撃は失敗したみたいだ。」
キルハム侯爵の私兵の1人が報告する。
「帝国の兵士だと見破られなければたいした失敗じゃない。また別の手を打てばいい。」
キルハム侯爵は意外と話しのわかるおじさんの様だ。
「そ、それがカルナガリア王国の貴族の馬車を助けたのが勇者だった様で。」
見る見る侯爵の顔色が青くなっていく。
「まずい、まずいって。」
そこに皇帝からの使者が布告書が渡された。
侯爵の顔色は青色にちょっと黒が混ざって大変な状態になってしまった。
「やばい、やばい、どうしよう。」
「それが、盗賊に化けていた私兵達がテスカの街の牢から逃げてワーリク侯爵の公邸に潜入しているそうです。」
「うむ、なかなか有能じゃなって言ってやりたい所じゃがもうダメ、撤収、撤収だー。」
って言っている所にドサドサと盗賊風兵士が転移されて来る。
そこに小さな子供も現れる。
「このおじさん達ここの人でしょう?面倒くさいから返すね。」
そう言ってさっさと消えた。
「なんだ?今の。」
その後帰ってきた兵士達に話しを聞くが全く要領を得ない。
とりあえず死んでしまったり、囚われたのは本物の盗賊達だけで兵士達は1人が頭にコブができているぐらいでみんな無事だった。
どうやらこの件で勇者が何かするつもりはないようだ。
ようやくキルハム侯爵の顔色に赤味がさして来た。
「た、助かった。」
それにしても私のように皇帝に忖度して勝手に動く奴がいなければいいのだが。
キルハム侯爵は本当に帝国の事を心配する憂国の志士だった。
多分。
その頃帝国では......
「グッドアイデアだよ。その手で行こうよアイスス。」
ジュギル子爵は嬉しそうに部下の作戦に乗る事にした。
「それならうまく行きそうだし皇帝も喜んでくれるよ。」
この人たちはみんなで強力するって言う考えは全然ないようだ。
貴族って言う地位を維持するには何か功績が必要だし他の貴族のことまで気にしていられないんだろうな。
執務室で1人ニマニマと薄笑いを浮かべているのもまあまあ気持ちが悪い。
きっと作戦が成功して皇帝に誉められている様子でも妄想しているんだろう。
誰も見ていないんだから放っておいてあげよう。
そこに皇帝からの使者がやって来る。
「ま、ま、まずい。ちょうどみんな出かけちゃったよ。」
「誰か、誰か、誰か止めてー。」
あいにく暗部のものも出払ってしまったらしい。
「ダメじゃー。」
シュギル子爵は絶望した。
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