カオスなんて俺が防いでやる:Re
篠原りあ
第1話 Khaos-Blake(カオスブレイク)
俺の不幸の始まりは、大人気アクション系RPGであるKhaos-Blake(カオスブレイク)シリーズをプレイしたことだ。
〜混じり合え、混沌と化すまで〜
これがカオスブレイクのキャッチコピーらしい。
どうやら物語の多くを語らず、自分でも物語を紐どくのがこのゲームシリーズの醍醐味のようだ。
カオスブレイク1が発売された時、今より二年前の十六歳だった俺は、遅咲きの厨二病満開時期であった。
SNSのプロフィールに
〜語り合え、会話と化すまで〜
と、カオスブレイクのキャッチコピーを真似し、これだけ書いていたのは混沌より深き黒歴史だ。
カオスブレイクは現在3部作も続き、4部作が考察されるほどの人気ゲームではあるが、他の追随を許さない程のレベルの、死んで覚えていく高難易度ゲームだ。
いわゆる、死にゲーだ。
当然俺は、Mでもなんでもない。
勿論言うまでもなく、Sでもない。
現在プレイしているのは
Khaos-Blake 1 the beginning
と呼ばれる一作品目に当たる。
昨日のアップデートにより、武器や防具のモーション調整に加え、新武器新防具が追加されたらしいから周回プレイしていた。
攻略時の快感がやめれず、カオスブレイク1と2、3もそれぞれ四周はループ攻略している。
初攻略達成の時は、手汗ダクダクに心が震えた。
あれがやめられない。
一種のカオスに陥ったのかもしれない。
今俺に訪れているのは、、、
ラスボスである〈諸悪の始祖・カラミータ〉戦に勝利すると、カオスブレイクの主人公拠点エリアの裏側にある濃霧が広がった場所の奥に行くことができる。
カラミータに勝利しないと濃霧があって強制的に行けない仕様になってたんだよな。
あれたしか、海外勢の方がver1.11.2で馬使いの擦り抜けグリッジで行けるみたいな動画上げてたよな、、。
グリッジ嫌いで実行はしないけど、参考までに見ておくか。
勝利して拠点に戻ると、濃霧が綺麗になくなってるんだよな。
勝利し濃霧があった場所の奥に行くと、立派な石造の祠の中に、苔の生えて古びた祭壇がある。
近づくと、、、
【大供物を────祭壇に捧げますか】
〈捧げる〉・〈捧げない〉
この強制イベントである。
ちなみに、指定した場所に即移動できる機能のファストトラベルが出来る場所はこの"古の祠"のみであり、強制的な行動制限がかかっているため、"古の祠"以外の場所には徒歩移動でも行けない。
参考までに、電源を強制的に落としても、このイベントからは逃れられない。若干クソだろ。
「これどっち選択しても悲惨なバッドエンドになるから選びたくないんだよな。正直1では姫ルート開拓はできないからな」
〈捧げる〉ルートの場合、解読不可能な女性の悲鳴が聞こえて何故か血塗れの主人公が映るエンディングとクレジットの名前が血塗れた文字になるんだよなぁ。
〈捧げない〉ルートの場合、【背後を振り向きますか】っていう選択肢が表示されるが、〈はい〉しか選択肢が出てこない。するとエンディングに主人公は映らず、クレジットのフォントもなんか真面目な感じのフォントになるんだよな。
これバグか?って思ってたんだけど、一月前くらいに開発者インタビュー動画でバグは無いって言ってたもんな。
「まぁ、検証がてら放置してみますか。暇だしソシャゲの周回でもしとくか」
言い忘れていたが俺は、趣味カオスブレイク、特技カオスブレイクと言いたいほどに、このゲームはやりこんでいた。
検証に目覚めたのは二周目攻略が終わった後であった。確率0.02%の超がつく程のレアドロップである血塗れの双剣を手にした時であったはず。
まだか…?
まだだよな…?
眠いな。そろそろ選択肢出てきていいだろ。
もう三時間だぞ。
俺は家庭用ゲーム機を繋いでたモニターに目を向ける。
【大供物────を祭壇に捧げますか】
〈捧げる〉・〈捧げない〉
の文字が変わらず出てきている。
すると急に文字が掠れ出した。
なんだ?モニターの不調か?コードの接続切れたか?と思いつつモニターのコード付近を確認してもそれらしき問題は見つからない。
まぁ買って2週間だし、初期不良かな。
全然使える初期不良だしそのままでいいか。
と、思いつつモニターに再度目を向けると、未だ見たことのない新たなメッセージを告げられた。
【己の"混沌"を全て祭壇に捧げますか】
※混沌値
〈捧げる〉・〈捧げない〉
ん?んんん?なんだこのメッセージ。初めて見たぞ。とりあえずSNS用に画面スクショしてっと。
かぁぁ、俺のしたことが。もう一周追加と検証用で更に二周追加だなあ。こりゃあ夏休みもカオスブレイクで終わっちまうかもな。
折角追加修正された武器や防具の、検証したかったんだけどなぁ
「とりあえず最初のメッセージだし、後から検証するし。無難に捧げとくか」
〈捧げる〉
ん?ちょっと待てよ。
プレイヤーステータスに混沌値なんて表記あったか?
さては、ゲーム内の死亡回数だったりするのか?
ステータス振りも出来ないような値なんて隠しステータスなんて幸運と呪いしかなかったんじゃないか?
まぁいい。どのみち調べるんだ。
どのみちエンディングで少し時間できるし、SNSのカオスブレイカー達に自慢でもしてくるかなっと。
モニターは勝手に電源が落ち、一つのメッセージが俺の視界の中心に出ていた。
モニターの画面が俺の視界に投影されたかのような気分だ。正直驚きと興奮を隠せない。
それはまるでライトエフェクトのような。
拡張した現実であるARを超えるような。
──まるで現実のような
【名無き混じり者よ、其方は何を望む】
〈平和〉・〈支配〉・〈破滅〉・〈混沌〉
カオスブレイク1・2・3初プレイ時にのみ出現するNPCプランとの会話イベントである。
拠点付近にある川の上流にいる老婆から告げられるセリフだ。
カオスブレイカー達からはチュートリアルババアなんて呼ばれてたりする。
モニターの画面を確認しようと瞬きをした刹那、激しい動悸と眩暈に襲われた俺は、座っていた椅子から転げ落ち、自らの体と共に意識まで転がり落ちた。
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【カオスブレイカー諸君へ】
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執筆のモチベーションに繋がりますので何卒!!
【カオスブレイカー】
ゲームKhaos-Blakeのプレイヤー達を指す。
また、プレイヤーとブレイクの合わせ言葉でもある。
さらに、ゲームKhaos-Blakeとリアルが混じり過ぎて混沌の住民と化した廃人プレイヤーのことをカオスブレイカーとも言う。
略称として、カオブレ、KBと呼ばれる。
【Khaos-Blake 1 the beginning order】KB1
(カオスブレイク 原初の秩序)
〜力無き己を責めるか、あるいは世界を〜
アクション系RPGゲームであるKB作品の第一作品。
【Khaos-Blake 2 the half ash sin】KB2
(カオスブレイク 灰混じりと化す罪)
〜救い出せ、侵し続けた世界を〜
アクション系RPGゲームであるカオスブレイク作品の第二作品。
【Khaos-Blake 3 the endless disorder】KB3
(カオスブレイク 終わり無き無秩序)
〜終止符を打つのは己の体躯か、世界か〜
アクション系RPGゲームであるカオスブレイク作品の第三作品。
【姫ルート開拓】
カオスブレイクにはエンディングルートというものがそれぞれ存在している。KB1でいえば、大供物を捧げるか否かがエンディングルート分岐となる。
姫ルートというのは、KB2以降に導入された姫に関するエンディングルートである。
開拓というのは本来無いはずのエンディングルートをNPCやストーリー分岐イベントを進めることによって、新たなエンディングルートを作る事である。
【チュートリアルババア】
NPC・プラン
通称・プラン婆、クソババア
「老婆の手解きを受けてみるかい」という一件わかりにくいメッセージが出てくるのだが、これはチュートリアル受けますか?というセリフだ。
カオスブレイクシリーズでは毎回出てくる老婆なのだが、この後のセリフがうざいということもあり、シリーズ重ねるごとにこの老婆を殺害し、亡者と化したプランが敵対NPCとなってしてしまうプレイヤーが続出したりとか…
手解きを受けるために〈はい〉を選択すると
「これだから初心な餓鬼は…」というセリフがボロ布を纏った小汚い老婆ことNPCプランからしゃがれた声で言われる。
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