小話塵芥箱

成見非

第1話〝動物園の猿〟

 動物園で猿が脱走したらしい。なにもいない檻にそれを謝罪する内容の看板がかけられていた。ダンボール。すると、奥から園長がやってきて「逸材だ」と小さく叫ぶから驚いて「何様ですか」と尋ねると「君は恐ろしいくらいに猿に見える」と言う。言われてみれば、鼻の下は伸びているし、全身は黒茶色の体毛で覆われているし、極めつけに全裸だ。たしかに、猿に見える。園長は「猿が捕まるまで代役をつとめてくれないか!」と頭を下げて申し込んできた。もちろん、給料は出るらしい。それ以来ぼくは、月50万で猿役をやっている。猿はまだ捕まらない。オスのニホンザルである。

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