第101話 寝ているときにも容赦なく通知とかイかれてるのか?
さっきまでの騒音が嘘かのように長閑な光景が広がっている。
鳥のさえずりが聞こえる。
あー癒やされる。
多分これは夢だな。
夢だって認識したら普通は目が覚めるはずだけど、精神的にかなり酷い目にあったんだ。
イレギュラーが起きても仕方がない。
俺がいるのは夢だけど、今はゆっくり休みたい気分なので寝ることにしようと思う。
夢で寝るって何なんだろうとは思ったが、そんな疑問が前に出ることはなく、俺は夢の中で更に眠りについた。
[スキル『睡眠内睡眠』を獲得しました。]
えっと……これは夢なんだよな?
あ、悪夢かな?
そっか、通知がトラウマ過ぎて遂に夢にまで化けて出てくるようになってしまったか。
いや、今まで疲れすぎて夢さえ見ることが叶わなかっただけで、本来ならもうこんな具合までトラウマになっていることに気付けていたのかもしれない。
まあどっちにしろトラウマになっていることは知ってたけどな。
絶対にそうだ。俺にとって通知は沙耶のスパルタ鬼訓練のときからずっとトラウマ、いやもうそんな言葉では表せない程の最悪の象徴になっている。
それなのに今になって悪夢として現れるのはおかしい。
慣れ始めたからか?
だとしても普通にトラウマなのは確かだ。
きっと精神が麻痺している結果なのだろう。
[スキル『習慣化レベル1』を獲得しました。]
ほら、もう嫌な予感がしてきた。
多分……いやこれはただの夢だし、そこまで酷い目には遭わないだろう。
……こんなに色々考えてたら普通に起きるよな?
どれだけ疲れてんだよ俺……しかも麻痺してそれが感じれないっていう……負の連鎖かよ。
[スキル『連鎖レベル1』を獲得しました。]
[スキル『連鎖レベル2』に統合しました。]
おいおい……これって嫌な予感しかしないんだけど。
悪夢ってことはつまり……
「やっほー! 習っ! 元気してたぁー?」
だろうね。沙耶が来るのは想定通りだ。
むしろ想定通り過ぎて拍子抜けである。
それでも、たとえ拍子抜けでも……こうやって、中々に強烈な辛さが付き纏ってくるわけで……
「おっぇ……」
俺は夢の中で吐いた。
もしかしたら現実でも吐いているのかもしれない。
傍から見たら、
『コイツ人の顔を見て吐いてる……ヤバっ最低じゃん』
と思うかもしれないが、これは夢である。
夢でまで我慢する必要があるだろうか?
いやない。夢でまで我慢していたらそれこそ精神がおかしくなる。
……どうせ夢なんだ。
何も考えず無視すれば良い。
[スキル『異常耐久レベル1』、『騒音拡声レベル1』を獲得しました。]
[称号『精神の化物』、『騒音拡声器』を獲得しました。]
[ユニークスキル『人格崩壊』を獲得しました。]
えっと……何? 俺もう疲れたんだけど。
睡眠さえうるさくしてくるのはただただ迷惑なんですが?
分かっててやってるでしょ。
[スキル『鑑定』を発動します。]
おいおい……やめてくれよ。
______________
【称号】精神の怪物
おおよそ生物には耐え切れないほどの精神の負荷に耐え抜いて者に与えられる称号。
精神の耐久に大幅な補正が掛かる。
また耐えられる精神の負荷の大きさが数百倍単位で膨れ上がる。
______________
【称号】騒音拡声器
周囲に騒音を撒き散らし、信じられないほどの不快感や苦痛を与えた者に与えられる称号。
他人に対する音関係の行為やスキル、魔法で不快感や苦痛を与えた回数毎に、敵味方関係なく、振動攻擊で与えるあらゆるダメージに対して大幅な倍率補正が追加される。
______________
またネタかよ。
本当に好きだな、ネタ称号。もう見慣れてしまったわ。
で? なぜそんな俺をネタにしたいんだよ。
とにかく静かにしてくれ。
ゆっくりできる夢でまでそんな嫌なことをしないでくれ。
本当に休憩時間をくれって……無理だよな。
このスキルにそんな気遣いが出来るはずがない。
事実、気遣いと空気を読むことが出来ないことに関しては信頼と実績は十分に保証されている。
そんな信頼と実績は要らないっての。
[スキル『信頼確立レベル1』、『実績確立レベル1』、『睡眠耐久レベル1』、『寿司ネタ生成レベル1』、『空気言語レベル1』を獲得しました。]
ふざけてる?
何が寿司ネタ生成だよ。
何? 俺のこと煽ってる? 絶対に煽ぃ……煽ってるよね?
あと空気読むって意味違うし……
本当になんなんだコイツ。
ともかくクソ最低だな、コイツ。
本当に祝福か?
呪詛の間違いなんじゃないか?
きっと鑑定が間違っているのだろう。
そうに違いない。
[スキル『障泥烏賊レベル烏賊』を獲得しました。……ジョークです。]
アオリイカ?
うん? またふざけてる?
連続通知の中に叡智まで混ざってくるなよ。
普通に寒いし……それにただただウザイだけだし、それに加えて、さり気なく俺が噛んだことを揚げ足にとってくるのはやめろ。
……マジで頼むから通知と叡智、両方とも消えてくれ。
互いに存在ごと抹消しちゃってくれ。(切実)
それが一番平和。そう平和だ。
何度も言うようでしつこいと思われるかもしれないが、何で夢でまでこの2つに苦しまないといけないんだ。
明晰夢ならもう少し自分の思い通りになっても良いじゃないか……
[スキル『明晰夢レベル1』を獲得しました。]
それって必要なくない?
もう休むのには夢なんて見なくて良いから。
普通に寝かせてほしいんだが?
毎回毎回こんなに鬱陶しい夢を見させられても迷惑なんですが?
「な~にさっきからブツブツ言ってるの?」
「……この妄想の存在は無視しよう」
「妄想じゃないよ! まあ本人でもないけど」
「はい? 意味不明なこと言い出さないでくれ」
「意味不明じゃないよーだって私は……あれ? 何なんだろ?」
「ヤバっ……ウザすぎ」
「あ、残り滓かな?」
「はい?」
「だから、沙耶の残り滓みたいなものだよ!」
「アイツ死んだの?」
「いや?」
一体なにを言ってるんだこの沙耶は。
……なんだろう。理不尽バグが多過ぎるクソゲーをしている気分だ。
それよりも酷い。やらないという選択肢を選べないのと同義なのだから。
だから夢とはいってもかなり疲れる。夢で疲れるとは一体……? そうか、これが新ジャンルの悪夢か……
ともかくこの自称残り滓にはお帰り頂こう。
それが今できる一番の改善方法だ。
と言っても苦しいのには変わりはないけど。
「あのさ、もうどうでも良いからどっか行ってくんない?」
「えっ、絶対に無理」
即答してきやがった。
この自称残り滓は頭をおかしくしてくるからきっと敵だ。
そうに違いない。
「うえ!?」
変な声を出して驚いた振りをしても無駄だ。
だって沙耶本人ですら敵じゃないかどうか怪しいっていうのに、ましてや本人じゃない上に得体の知れない何かだぞ?
それってもう敵対個体と見なしても普通に良いんじゃないか? っていうか良いよな。
コイツのことは悪夢を見せる悪魔か何かだと思ったほうが良さそうだ。
「酷い……」
今の俺の状況の方が酷いわ。
あとナチュラルに心読んでくるのやめてくれる?
「だって……夢の中って皆が心の声だだ漏れなんだよ? そんなの気を付けることが無理だよぉ……」
こっちだって無理だわ。
[ユニークスキル『敵召喚』、『精神分体生成』を獲得しました。]
[固有スキル『疲労夢』を獲得しました。]
[スキル『明晰夢レベル1』、『睡眠妨害レベル1』、『休息妨害レベル1』、『自動妨害レベル1』、『再生妨害レベル1』、『残穢察知レベル1』、『低位悪魔召喚レベル1』、『夢見レベル1』を獲得しました。]
あーもう八つ当たりだ。
あの残り滓は絶対に潰す。
いつもの通知の恨みを存分にぶつけてやる。
「そんなぁ……理不尽だよ、習くん……私これでもちゃんと自我があるんだよ?」
それがどうした?
俺の夢の中の存在に自我があるなんていう馬鹿らしい話なんて聞いてられるかよ。
もしあったとしてもそれは悪魔の仕業に違いない。
大体のファンタジーもそうだし。
仮にこの自称残り滓の言い分が正しいとするならば、この自称残り滓は十中八九悪魔だろう。
つまりどっちにしろ潰さない理由がない。
よって潰す。分かった?
「酷いっ……私オリジナルとほとんど変わらないのに……」
性格思いっきり違いますけどね?
まあウザったらしいところとかは異常に似てたけどな。
まあもう決めた……
[ユニークスキル『敵召喚』、『精神分体生成』を獲得しました。]
[固有スキル『疲労夢』を獲得しました。]
[スキル『明晰夢レベル1』、『睡眠妨害レベル1』、『休息妨害レベル1』、『自動妨害レベル1』、『再生妨害レベル1』、『残穢察知レベル1』、『低位悪魔召喚レベル1』、『夢見レベル1』を獲得しました。]
……あ、第二ラウンドってやつ?
これで通知は終わらないのか?
[ユニークスキル『敵召喚』、『精神分体生成』を獲得しました。]
[固有スキル『疲労夢』を獲得しました。]
[スキル『明晰夢レベル1』、『睡眠妨害レベル1』、『休息妨害レベル1』、『自動妨害レベル1』、『再生妨害レベル1』、『残穢察知レベル1』、『低位悪魔召喚レベル1』、『夢見レベル1』を獲得しました。]
うん、これさっきと同じ連続系だな。
あー終わった。本当に終わった。
ただでさえ精神的にも肉体的にも限界過ぎて正直無理なのにこのイジメるような仕打ちはあんまりだ……
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