第32話 勝手に開始されたシナリオなのにやらなきゃいけない、しかも夜に。……鬼かよ。
……は?
いや勝手に進めんなし。
保留って手もあっただろ。
なんでいきなり始めちゃいますかね?
[目的地を送信します。]
どうせ沙耶の部屋のところだろ?
あの地獄の空間。
俺が複数回も
あそこにこれから行かなければならないと思うだけで吐き気がする。
もう二度と行きたくなかったんだけど。
うわっ。またかよ。
この頭に直接情報が流れ込んでくる感じクソ気持ち悪い……
……他の方法はなかったのかよ。
って、場所が違う!?
なんで少し遠くの河川敷!?
……あ、そういえばあの中って15レベルまで入れないんだっけか?
……面倒くさいな。
つまり、そこでレベル上げをしろと?
嫌だよ!なんでわざわざあの危険そうな生物の中に突っ込んでいかないといけない訳?
本当に勘弁してくれ……
[スキル『特攻レベル1』を獲得しました。]
いやしないからね?
そんなハイリスク、ローリターンなこと誰がやるか。
リターンが高くてもやらないわ!
それにしてもなんで今!?
……もう今の時間夜なんですけど。
せめて明日からとかできませんか?
[不可能な確率が高いです。ただし、夕食をとる程度の時間は確保できると思われます。]
夕食をとったらすぐに河川敷に行けと?
訳分からないんだけど。
それから夕食を半ば早めにとった俺は、ペナルティーが怖すぎたため即座に河川敷に向かった。その際に早食いとか言ってディスられた事にはムカついたがグッとこらえた。
その場所にはなぜか沙耶もいた。沙耶もいた?
は? 今は一番関わりたくないんですが。どうにもこいつを見ると恐怖が沸き立ってくる。
仕方がない。一応俺殺されかけた訳なんだし。
「もしかして習くんもユニークシナリオっていうやつで来たの? というかそれしかないよね!」
「ああ、そうだ。全く迷惑な話だよ。………はあ、最悪」
「まあまあ。そんなこと言わないで! こういうのって楽しんだもん勝ちなんだよ?」
呑気にも程があるぞ。
でもそっか。
こいつアホみたいにステータスは高いしな。
沙耶ならステータスのゴリ押しでもなんとかなるのかもしれないな。
[スキル『ゴリ押しレベル1』を獲得しました。]
あのなあ……俺を弄るのも思考を遮るのもやめろとあれほど……はあ。
……とりあえずまあ沙耶がそんなこと考えてるはずないか。
だってあの沙耶だぞ?
絶対にそんなことは考えられる訳がない。
「今なんか失礼なこと考えたでしょ!」
本当にこういうところだけは勘が鋭い。
他もちゃんとしてるなら助かるけど、他がポンコツ過ぎてむしろ厄介だ。
もっと常識的なところにその勘を発揮してほしかった。
……とりあえず当たり障りのないことでも言っとけばいっか。
「別に? 沙耶こそ自意識過剰じゃないか?」
「むぅ! そんなことないもん!」
「ハイハイ。とっとと終わらせたいから早く進むぞ」
「オッケー!」
[ユニークシナリオ『
[対象を当該座標に転送します。]
は? 何急に。いきなり転送とか言われてもよく分かんないんだけど。
え? ちょっと光っ……
「え? ちょっ、なにこれ? いや、え? は? ここどこだよ!」
「洞窟じゃない? こんな場所来たことないから新鮮だなぁ……」
「いや、何でそんな冷静なの? 普通はもっと困惑したりとかするもんだろ」
「うーん……そうなのかな? 分かんない!」
こいつズレてやがる。いや知ってたけど。
普通さ、もっと危機感とか感じない?何があるのか分かんないんだよ?
しかもファンタジー的な意味不明なものとかあるし。
そんな危険度が未知数のところにわざわざ入れる度胸は俺にはない。
そういう意味では沙耶は俺よりも随分こういうのには向いてるのかもしれない。
ほら、異世界モノのラノベの最上位冒険者って変な性格の人が多い傾向にあるし。
色々変な沙耶にぴったりな役周りだろう。
[スキル『冒険レベル1』を獲得しました。]
……はあ、とりあえず状況を把握しないと。
[スキル『状況把握レベル1』を獲得しました。]
うっざ。
……叡智、とりあえずこの場所の情報をくれ。
[了解しました。現在地は
げっ。トカゲかよ。
気持ち悪そうだな……もういいや。
全て沙耶に任せよう。うん、そうしよう。
俺は自分の身を守るのに専念しよう。
[スキル『自衛レベル1』を獲得しました。]
今はいらないって。
あ、でも自分の身を守るのには最適か?
それなら良かったのか?
[戦闘にも参加してください。シナリオの進行には最低限レベル15が必要です。また、このユニークシナリオの推奨レベルは120です。可能な限りレベルを上昇させておくべきです。仮にレベル15の状態で攻略を行った場合、生存確率は15パーセント程度、シナリオ成功率は約0.2パーセントです。]
……マジかよ。
これって強制参加ってことだし、事実上俺にずっと戦闘しろと言ってるようなものじゃん。
俺まだ最初のデカ鳥と沙耶くらいしか戦闘経験ないんだけど?
そんな相手にこれは酷だと思う。
「レッツゴー!」
「ハイハイ……元気でいいこったな」
俺はもう少し諦めている。
だって強制戦闘とかやらされるらしいわ、きもいトカゲがいるらしいわでもう精神がやられそうだ。
そんな俺とは裏腹に沙耶はやっぱり能天気らしい。
もう考えるのも嫌になってきた。
沙耶の姿を見ていると何だか今の俺がばかばかしく思える。
でも俺のほうが一般的な視点には近いんだよな……
……こんなことになってしまったならもうなるようになれだ。
また通知がうるさくなる恐怖と、戦闘の恐怖に苛まれながら俺は沙耶の後についていくことにした。
_______________
作者です。
次回の話は最後の一文から察してください。
悪しからず。
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