第15話 心の旋律

カフェでのアコースティックライブ以来、雅史と神子の共作した曲は地域内で少しずつ評判になり、二人の関係もそれに伴い深まっていった。ライブが終わった後の彼らには、音楽を通じてさらに多くの人々と繋がりたいという思いが強くなっていた。


ある日、二人は地域の音楽スクールから、子どもたちへのワークショップを行う依頼を受けた。これは、子どもたちに音楽の楽しさを伝えるだけでなく、自分たちの音楽活動を次世代に広げていく機会でもあった。


ワークショップの準備を進める中で、雅史と神子は、子どもたちに音楽の基本を教えつつも、彼らが自分自身の「心の旋律」を見つけられるようなプログラムを考えた。彼らの目標は、単に音楽技術を伝えることではなく、子どもたち一人ひとりが音楽を通じて自分の内面と向き合い、表現できるようになることだった。


ワークショップ当日、スクールの教室は好奇心旺盛な子どもたちでいっぱいだった。雅史はピアノを、神子は歌を担当し、最初は基本的な音楽理論から始めたが、すぐに実践的な演奏へと移行した。


特に印象的だったのは、子どもたちに自由に楽器を触れさせ、彼らが思い思いの音を出す時間だった。最初はためらっていた子どもたちも、次第に楽しんで様々な音を試し始めた。雅史と神子は、それぞれの「心の旋律」を大切にし、音楽に対する愛と楽しさを伝えようと努めた。


ワークショップの最後には、子どもたちが一緒に簡単な曲を演奏する時間を設けた。不器用ながらも一生懸命に演奏する子どもたちの姿に、雅史と神子は深い感動を覚えた。そして、その演奏は、まるで彼らの純粋な心が織りなす美しい旋律のようだった。


「音楽って、本当にすごいね。みんなの心を一つにできる。」ワークショップが終わった後、神子が言った。


「うん、音楽は言葉以上のものを伝えられる。今日の子どもたちの演奏を見ていると、それを改めて感じるよ。」雅史も同意した。

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