ノエル

双葉紫明

第1話

また雪が降った。

暖冬と言われた今冬、スキー場は雪不足に悩まされたけれど、僕らはほぼ雪かきをせずに済んでいた。

スキー場がクローズした直後、一度一面白くなる。

それは例年のジンクスめいたものだけど、今年は日曜でスキー場が終わって、水曜にしっかり積もるくらい降った。

いつもは白くなる程度だから、こんな年に皮肉なもんだと思いながら雪をかいた。

今朝。

4時に目を覚ました時にはまだ降ってなかった。

次に目覚めた7時半、積もっていた。

それから2時間と少し、ずっと雪かきしてた。

今日のこの大雪は特別だ。

水曜日も祝日だったし、今日は土曜日、明日の日曜も雨予報。

予約制の売れない飲食店を経営している身には、予報の時点でご予約は望めないし、ならばと野に出て売り種を探す事も出来ない。

八方塞がりな中、せめて間違えて入って来たお客様をもてなせるように、しかし期待は限りなく薄い。

けれどそれよりも、今日は本来君が店に来る筈の日だった。

別れの季節。

お別れ会。

その娘たちの為の叶わなかった舞台は、僕と君のお別れ会になった。

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