第5話(九)

 鍵を閉めた時点で変なスイッチが入ったと思った。

 迫ってくる間宮に抵抗する間もなくベッドに押し倒される。

「……ちょっ、待て……っ」

 鍵掛かってるとはいえ、こんなとこ見られたら一発でアウトだろっ。

「真純のお父さんに反対されてもずっと好きだって言ったでしょ? 真純は違うの?」

 間近に見下ろされて間宮が聞いてくる。

「違わない……っ、って、あ!」

 否定したのに間宮は俺の下肢を服越しにむんずと握った。

「……あっ、あ……だめ……っ、」

 強弱をつけて揉んできて、一気に良くなってきた。

「こんなに感じやすいのに俺から離れるつもりなの?」

「あ、あ、……っ、!」

 高く声が上がりそうで慌てて手で塞いで押し殺した。

「……ン……っ、ん……っ、んっ、」

「俺じゃなくて、他の誰かにしてもらうつもりなの?」

 熱い息がかかる距離でこっちの反応を覗き込みながら、片手で器用にベルトを外して下着の中に直に手を入れてきた。やんわりとすでに勃起した性器を握り込まれる。上下にしごかれた。

「んっ! ぅん……っ、んん……っ、」

「真純……俺から離れたくて親に会いたいって言い出したの?」

「……っ、!」

 声が出せなくて俺は首を振って否定した。

「……真純……?」

「……ち、がう……っ、」

 動きを止めて聞き返す間宮に、俺は小さく、でもきっぱり否定する。

「これから……ずっと、一緒にいたいから……」

 不思議そうに覗き込む間宮に必死に告げる。

「一緒にいたいから、だよ」

「真純……」

「もう、どけ、お前」

 もう体温が上がっていた身体はどうしょもなかったが、このまま続けていたら最後までしたくなってしまうので、間宮に停止を促す。

「待って……真純」

 停止したのに、間宮が下に顔をずらして、下着を下ろして性器を口に含んだ。

「んっ、あ!」

 ばか、と思ったが、声を押し殺すために手首を噛んだ。

 熱い口内に翻弄される。舌がねっとりと性器をなめ上げて、唇で上下にしごかれる。腰がもっと、といやらしく揺れてしまう。

「んっ、んっ、……んんっ、あぁ!」

 ───あっけなくイってしまった。

「……はぁ、……はぁ、あ……ばか……」

 迷いなく出したのを飲み込む間宮に、何してんだと思ってると、間宮がズボンを抜き取ろうとする。慌てて止めた。

「ダメだ! 今日はダメ……!」

「……でも、真純も辛いでしょ?」 

「お前、俺のこと信用しなかった罰な」

 言うと、間宮の眉が困ったように下がった。

「……だって」

「お前、一番最初もこんな感じだったよな」

 熱をごまかすように軽く思い出話をすると、さらに間宮が困った顔をする。

「……いや。最初は優しく出来たよ……?」

「一番は部室で無理やりしそうだったろ?」

「───────」

 思い当たったのか、遠くを見る目をした。

「……落語同好会は部じゃないから、あそこは部室じゃなくて……」

「そういう揚げ足取りみたいなことを聞きたいんじゃないよ」

「……すいません」

「ちゃんと……一緒にいられること考えてるよ」

 服を整えながら、俺は間宮に真っ直ぐ伝える。

「ちゃんと俺、お前のこと好きだよ」

「……………」

 間宮が泣きそうにうつむいた。

「……うん」

 大丈夫なのに、と思ったが、そんなに安心させなかったかとも思ってしまう。もう一度俺は繰り返した。

「お前のこと好きだよ」

「うん……俺も好き」

 優しく間宮が俺を抱き締めた───。



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