第4話
「───言いたいことがあれば言えよ」
体育祭帰り道。物言いたげに、でも一言も発せず俺のあとを付いてくる間宮に、面倒だと思いながら誘い舟を出す。
「だから。藤井先輩も本気で言ってるんじゃないって」
なんかこっちが悪くて弁明してるみたいで不本意なんだけど、と付け加えたくなったが、我慢して反応を待つ。
「真純は自覚がないと思う」
口を開いたかと思ったら説教ぽくて、俺はげんなりした。
「自覚って……」
なんとなく堀が言っていた事を思い出したが、そのことは追いやって、
「どっちにしろ俺はどうにもならないから」
だから安心しろ、と言うのもなんだかなあ……と、うーんと内心唸ってると、ぐいっと腕を取られる。
「そもそも真純から好きって言ってもらったことない」
「……………」
不安げに見つめて言ってくるのに、俺は押し黙った。
面倒くさいこと言い出したな。
「今、面倒だと思ったでしょ」
「……………」
変にカンがいい。
───的確に当てにきたのに俺はますます言葉に詰まったが、少し反論する。
「言ってないわけじゃない」
「伝わってないから、言ったうちに入らない」
「………」
おっしゃる通りで。自覚はあるよ。
「……ちゃんと言って欲しい」
腕を握り込んだまま、真っ直ぐ見下ろしてくるのに、どうしたものかと考えを巡らす。真剣なのはわかってんだけどなあ……。
不安なのかな? 解消させてやるのが一番だと思うけど……。
チラリと俺は視線を外した。
「あ」と声を出して、間宮の手をさりげなく離させた。
「家着いた」
は? と間宮が固まる。
伊達に近くの学校選んでない。
「じゃあ、また明日」
間近に見える自宅の門まで小走りしながら、俺は手を振る。慌てた様子で間宮が言ってくる。
「ちょっ……それはどうなの?!」
俺もどうだと思うけど、今は言える気がしない。しょうがないのだ。
とりあえず今日はあきらめてくれ、と思いながら家の中に入る。
───明日どうしよ、と空中を睨み、間宮のスマホに『後で』とだけ送った。
続く
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