ナイチンゲールを始祖とする看護婦軍団、これはそれを継承するリリスの物語
リリス・イリングワースは戦場看護婦だ。 リリスの仕事は前線に残された負傷者を撤退させ、後方のキャンプの医療部隊に治療を引き継ぐこと。
舞台は20年前に王国と隣国とが魔法の行使で衝突した『魔法戦争』。
魔法を積極的に取り込んでいこうとしている王国と、先の見えない魔法技術から科学技術に移行したい隣国とでは当然主張が折り合わない。
永い、気の遠くなるような軋轢と競争ののち、かくして魔法戦争が勃発した。
開戦当初、王国と隣国との兵力差は二倍近いと皆が考えていた。
だが王国側には秘策があった。
二倍の兵力差を埋めるため、王国軍は負傷兵を魔法で治療しすぐに戦場に送り戻せば良いということを魔法院の天才の誰かが考えついたのだ。
一人の兵士が通常の二倍戦うのであれば兵力は互角、それ以上であれば王国軍の方が有利となる。
これを実行に移すため、今までいなかった戦場看護婦なる謎の職業を創設し、大陸の各地に軍医を送って最先端の医療を学ばせる。才能ある魔導士たちを育てると同時に魔法院で治癒魔法の研究をさらに進め、三十年以上もの歳月をかけて王国はこの日のために密かな軍備増強を行なっていた。
開戦後、受け身一方のウサギ同然だと思われていた王国が実はとんでもない猛禽類だったということに人々が気づいた時には大騒ぎになった。
負傷兵を短時間で回復させ、再度戦場に赴かせる。魔法技術に長けた王国ならではの戦略だ。
開戦後明らかになったこうした事実は隣国政府にとっても衝撃だったようだ。なにしろ何人無力化しても数時間以内に王国軍は回復してしまう。いくら殺しても数が減らない。というかそもそも殺せない。
戦場を駆け抜けるリリスの戦いが今、始まる。
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