第3話 危険物を集めないでよ
うわ~あれっちょっとじゃなくヤバくないかな……。
バイスは冷や汗をかいた、元はスケルトンなので汗などかく訳もないのだがそんな所まで再現するプニの『擬態』の性能は高い。
それはそれとして。
呪われた品物、俗に呪物とでもよばれそうなそれらは単純な話ダンジョンからの出土品に魔力や魔術ではなく呪いが込められている厄介な出土品である。
ハッキリ言ってお宝ではなくむしろ持ち帰っても一銭にもならないゴミ、素人が触ると何が起こるのか分からないダンジョントラップの一種だ。
そんな物を荷車に山と積んでいる一団がいる、流石にドン引きしているとその一団にいた人間の一人に目をつけられた。
冒険者なのは間違いないが目つきや装備は軽装の斥候職、或いは盗賊や山賊の仲間みたいな見た目をしている実に性格が悪そうな男だった。
「おいおい人様がダンジョンから運んできた宝の山をジロジロ見てなんだアンタ~?」
「いえっ何でもないですよ?」
「頼むからこそ泥みたいな真似はしないでくれよ? 流石に一目があるから人間を殺るのは問題になるからな!」
ニヤニヤと汚い笑みを浮かべる男、バイスとしては呪われた品物なんて頼まれても盗むなんてする気はなかった。
「……何をしているゴロ」
「ジョゼさん、いやっ変なのがこっちを見てまして」
ジョゼと呼ばれた三十代くらいの短い金髪と青色の目をした大剣を背負った男の冒険者はバイスを一瞥しゴロと呼んだ男に話をする。
「…つまらん諍いを起こすなと依頼人に言われているよな?」
ジョゼが静に言うとゴロはひるみながら「へっへい、すみません」とバイスではなくジョゼに謝っていた。
二人はバイスには何も言わず荷車へと戻っていった。
ふうっ面倒な事にならなくて良かった……けど呪われた品物を集めてるだよねアレ、大丈夫かな?
呪われた品物は知識のない者が手を出すと危険だ、冒険者を使ってまで集めている理由も分からない。
あの一団には近づかない方がいいかなっなんか嫌な予感するし…。
するとバイスの頭の上のプニ(他の人間には『擬態』によって見えない)がプルプルと震えていた。
(あの弱そうな人間、バイスを馬鹿にした……許せない! 溶かして死体を完全に消し去れば完全犯罪の完成! プニの怒りをおもい知らせる!)
(……おもい知らせちゃ駄目だよプニ)
プルプルと怒れるプニをなだめるバイスであった、完全犯罪は決行される事はなかった。
バイスはその日、幾つかの出土品を買ってバッカニアに戻った。
商人ギルドに戻り、受付のエルスに声をかける。
「エルスさん、少し聞きたい事があるんですが良いですか?」
「はい、何でも聞いて下さい」
エルスは金髪をポニーテールにした緑色の瞳を持つ十代後半くらいの若い受付嬢だった。
エルスは数日前に商人ギルドに登録したばかりのバイスの事を覚えていた、知らない事も多いかなと考えて答えた。
「実は明日バザー市場で物を売りたいんですが、バザー市場の責任者か許可を貰える人間を知りませんか?」
バザー市場はバッカニアの商店街の端っこで開かれる店を持たない駆け出しの商人が大風呂敷を広げその上に商品を並べている小規模なバザーである。
当然バザーなので場所代なり責任者の許可が売る側として参加するには必要である、そこで商人ギルドのエルスに質問をした。
「それならギルドの方から責任者の方に話をしておきましょうか?」
「そんな事までしてもらえるんですか?」
「はいっ冒険者ギルドと違って商人ギルドは商人同士の繋がりを補助して商談を成立させる事を主にしているギルドですから、もちろん仲介の手数料は掛かりますけどね」
「なるほど」
普通に考えて街の外から来て数日の人間と商人ギルドじゃあ信頼度が違うし商人って信頼とか信用が何より大事だから自分が動くよりも確実だよな…よし。
手数料の金額を確認し、妥当だとおもったので仲介を依頼する。
「それなら手数料を払うのでお願いします」
「分かりました」
バイスは手数料、そしてバザーへの出店料として銀貨を数枚支払う。
そしてその日の夜に準備をして翌日にバザー市場へと向かった。
そして責任者の四十代くらいの男と少し言葉を交わして案内された場所で大風呂敷を広げ、背負子に背負っていた商品を並べていく。
バイスが購入したダンジョンからの出土品は陶器のツボや食器の類、後は簡単な魔術が付与されたアクセサリーや革のブーツなどであった。
武具や防具はやはり買い取りの値段もお高く、買う人間も粗野な冒険者の可能性が高い。
またあのゴロという冒険者みたいなのにからわれるのは勘弁だ、とバイスは意識して冒険者が選ばなそうな品物を選んで買い取っていた。
そして大風呂敷に腰を降ろして他の商品と客の会話を聞いたりしていると自分の大風呂敷の前に一人の女冒険者が立っていた。
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