うちのスライムが旅に出たいと言ったので…

どらいあい

第1話 ダンジョン辞めます

 そこはダンジョン、剣と魔法の世界にある冒険者とモンスターが日夜命懸けの戦闘を繰り広げる戦場である。


 そこで働くスケルトンのバイス、戦闘が好きでない彼はダンジョンで倒されたモンスターや人間の死骸や血で汚れた床や壁の掃除を担当していた。


 もっとも死骸の処理も汚れも彼がティムしているペットのスライム、プニの仕事である。


 プニがプルプルしながらもユッタリと動き倒れたモンスターや冒険者を呑み込み消化していく。


 この時装備などは汚れは取り除くが基本的に残すようにバイスはプニに頼んでいる。


 冒険者やモンスターの装備やらアイテムはダンジョン側で使える物は直して冒険者をおびき寄せるお宝として宝箱に配置するのだ。


 昨今はこの宝箱の中身だけでなく木箱の方まで持っていく冒険者が増えている、金に困っているのか薪にでもするのか知らないが宝箱は一から作るのも手間なので残してほしいバイスであった。


 そんな宝箱の紛失の報告もダンジョンの上層部にするのもバイスの仕事であった。

 バイトって賃金安いのにする仕事は正社員と変わらないんだよね、と心の中で溜め息をつく。


 すると自信の身体に力が漲るのを突然感じま、バイスはこの感覚を知っている。


 レベルアップ。

 ダンジョンで戦ったりそれ以外にも様々な行動を続けているとダンジョンモンスターそして冒険者問わずその肉体や持っている能力が強化される現象が起こるのだ。


 バイスは自信の身体能力とジョブであるモンスターテイマーの能力がアップするのを感じた。


 丁度プニが処理を終える、その大きさは直径ニメートルくらいあった青いプルプルボディがどんどん小さくなりバイスの手の平に乗る大きさになった。

 バイスはプニを手の平に乗せる。


「ふふっプニ、どうやら自分はレベルアップしたみたいだ。もしかしてプニもレベルアップしたかな?」


(………した)


「……え?」


 バイスは少し固まった。

 今までプニからテレパシーが送られてくる事などなかったからだ、しかし目の前でプルプルしているプニから更にテレパシーが送られてくる。


(プニはレベルアップしてバイスとテレパシーが出来るようになった、多分バイスも出来る)


(ええっ本当に? あっ出来てる…)


(モンスターテイマーはレベルアップするとモンスターとコミュニケーションがどんどん取りやすくなるジョブ、バイスはやっと一人前になった)


 よもや自分のペットに半人前だと思われていた事実にがく然とするバイス、しかし目の前のプニの可愛さを前にすると中々強くは言えない。

 結果としてかなり甘い育て方をしてしまっていた。


(そっそうなんだ…けどこれからはプニともっと仲良く出来ると思うと嬉しいよ、やっぱりペットが何を考えているのかって一番気になる事だしね)


(………違う)


(え?)


 目の前のプルプルからハッキリとして遺憾の意を感じたバイス。

 そしてプニはテレパシーでその真意を伝える。


(プニは……プニはペットじゃなくてバイスの相棒! プルプルプルーーー!)


「えっ!? ちょっプニっ!? わわっ」


 プニはテレパシーで猛るとバイスの手の平の上からポインポインとジャンプして移動を開始する。


 そしてバイスの頭蓋骨の登頂に成功するとそのてっぺんでプルプルしだした。


 するとシュ~と白い煙を上げるバイスの頭付近、プニの色々な物を溶かす酸攻撃が炸裂したのだ。


「わ~~っ! ちょっちょっとプニさん!? 溶けるから頭の穴が増えちゃうから辞めてーーーっ!」


(プニの怒りを分かったかバイス?)


(ううっうん、分かったから分かったから暴力に訴えるのは無しにしよ…)


 怒りのプニの前にバイスのできる事はただ許しを求める事だけであった。


 実際にダンジョンでの清掃の仕事はプニあってこそ、日頃のバイトで日銭を稼いでるのはプニなので元より強くはでられないバイスなのだ。


(それでいい、それともう一つプニはバイスに言いたい事がある)


(えっまだ何かあるの? あっいやいや聞くから、話をちゃんと聞くから消火液は無しでね……)


 バイスの頭の上に鎮座するプニ、そのテレパシーが飛んでくる。


(もうこんなジメジメしたダンジョンで死骸の処理するのはイヤ! プニは外の世界を見てみたい!)


(エェーーーーー……………ッ)


 バイスが思ってた以上にアグレッシブだったプニ、どうやら外の世界を渡り歩くのが希望らしい。


 バイスとしては安定していて冒険者と戦うリスクのないダンジョン清掃のバイトは悪くないのだが…再び頭の上がシュ~シュ~しだしたので慌ててプニの意向を了承した。


(分かった、分かったから…それじゃあ何処か行きたい所はある?)


(色々な所に行きたい!)


「……色々な所にかっだったら」


 そしてバイスはダンジョンを辞める事にした。

 そのバイスたちが向かった場所は…。


【作者】


 今日の深夜までに1話から15話まで投稿します。

 明日からは毎日1話投稿で午後7時07分に投稿する予定です。

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