25
「お嬢様、今日は金曜日ですね」
布団でゴロゴロしていると、そうヤコが話しかけてくる。
『あ、そうなの?知らなかったって言うか我には金曜も土曜日も関係無いから知らないよ』
何度も言ってるけどな。
「十五日の日曜日ってご存知でしょうか?」
『知らないけど、それがどうかしたか?』
「なら良いんです。今日がその日と言うだけなので」
ええ、何それ。気になるので聞こうと思ったらそのまま行ってしまった。
『ばっとんとグゥルは知ってる?』
《多分、アレっすね。都市伝説的なヤバい奴が出るみたいな》
《夜の街に一人で歩いていたら突然後ろから人を襲う奴がいるって噂は聞いた事があるな》
『激ヤバじゃん、怖。物騒過ぎない?』
成程、ヤバい奴じゃん。……そう言えば似た様なのが前世でもあったなあれは十三日の金曜日か。
そんなことをぼんやり考えながらばっとん達と喋っていると玄関のチャイムが鳴った。
『はいはーい、今出ます』
《と、元気良く出るお嬢の前に突然刃物を持った男が現れた》
『ジェイソン!?』
「え、え!?」
『あ、いやこっちの話。アハハ……』
大きな声に驚いて、震える様なそんな少女が殺人鬼な筈が無い。そう思って笑う。にしてもこの子初めて見たけど、一体誰だ?対吸の制服じゃないから隊員じゃないだろうし。ばっとんは後でちょっとキレよう。
「あ、えと初めましてですよね?わ、私は会った事あるんですけど」
『え?』
「いえ、一方的に私が会っただけなので。それも昔なので。前の家です」
『え、前の家?』
前の家もと言うとあそこだろうけど、佐藤ダンボールさん以外来てない筈。となると、客として入ってない?
あっ、もしかしてアレかな。
『分かった!』
「え、ほ。本当ですか?」
『ごめん、耳貸して。
もしかして、あの時のゴキブリ?』
「……は?」
瞬間、小さかった筈の彼女の体は大きく膨らんだ気がした。どうやら、鶴の恩返しみたいな感じでは無いらしい。と言うかやっぱり、聞き方がアレか。でもじゃあどうやって聞けば良かったんだ?
「私は、暗殺代行の死神です。元々貴方の御命を頂戴する為に行ったのですが」
「家で
『え?何?何言ってんの?』
《つまり、今まで命を奪う側だったのが。いつの間にかハートを奪われていたって事か》
《イケナイ女っすね……ご主人は。まぁ自分もその被害者の一人っすけどね》
《しかもタチ悪い事に自分の事をカッコいいと思ってて、その可愛さには気付いてなかったからな最近まで。恐ろしい奴だ》
なんか優しくないなぁ二人とも。もっと我に優しく敬って欲しい。主人だからさぁ、もっとヨイショしてくれても良いんだぞ?
『上手いこと言ってるけど我が悪いの?これ』
《責任取れ》
《自業自得っすね。可愛過ぎるからいけないんすよ》
『えーっと、今は我に殺意は無い?』
まずこれはしっかりさせなければいけないよな。死にたく無いし。
「あ、ありません!死神だったのは過去ですし、仕事で依頼人に雇われただけだったので」
『誰だ?』
「貴方に恨みを持つあの方です」
『……あの時のゴキブリか』
殺されたから恨み持ってるだろうし、恐ろしいな。何か動かないと不味いな。呪われてしまう。
『南無……。はっ!そうだ墓でも作ろう!ヤコ〜』
「ど天然?まぁ、可愛いから良いや」
《あぁ、また犠牲者が一人……》
《ようこそ.こっち側へ。っすね》
にしても最近、お客さんが多いな。ヤコに来客セットを用意してもらった方が良いかもな。お茶とか、お菓子とか。
って言うか命狙われまくってるな我。まぁそりゃあそうか。寛ぎまくってるけど、此処敵のアジトだし我が此処にいる事自体おかしいもんなぁ。
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