第4章:二大勢力

輸送

◆◇◆◇◆◇◆◇



「あ……」


 暗く染まったユニットコンテナ。

 もはや動力など、一切通っていないその中で、ルプスは再び目を覚ました。


「はっ!


 ……魔女は……っ」


 ルプスの傍らにて寝ていた魔女。……その頭からは、出血の痕が見られている。


「……イド。イド、イド。起きてるか、イド」


『オハヨウゴザイマス。


 ……現在、アイドレは起動していませんし、起動できない状態にあります。私は独立ユニット故、こうしてお話できる状態にあります』


「……そうか。


 どうなってる、今は———」


 ルプスがユニットコンテナ開放のボタンに手を触れようとしたそのとき、


『やめた方がよろしいです』


 まさかの、イドからの待ったがかかった。


「……なぜだ」

『この機体は今、輸送されているものと思われるからです』


「っ?!」


 そう、今まさにこの機体は輸送中だった。

 西大陸北部……そこにある、とある土地に向けて。


「輸送中?!……馬車でも使っているのか?!」


『いいえ、恐らくサイドツーであるものと思われます。該当データが発見されました。


 ユニットコンテナが接続され、そこに積荷収容スペースが確保された、2人4脚のサイドツー・レヴです』


「そうか。

 ……どこに、誰が輸送しているかは———」


『分かりません。しかし今は、本機も動けない状況下です。


 下手に事を起こせば、状況は悪化するものと推測します。故に、今は沈黙を保つのが最適解かと』


「そうか……助かる。


 ……待て。待て、待て。今、アイドレのマジニックジェネレーターは……稼働しているか?」


『稼働率……0%。普段から25%は稼働し、魔力を生成していますが、それすらも今は尽きています。今は予備の魔動力源が、どこかに向かって供給中です』


「…………なるほど、そういうわけか」


 ———その供給先について、ルプスは心当たりがあった。心当たりがあるというか、その『心』そのものだった。


「供給先は分かった。ソイツは俺だ。俺の体だ。……それが分かっただけでも……


 そうだ、その魔力は、今のままで消費すれば……あとどのくらいで尽きる?」


『2日、といったところです』


「そうか。……それまでに、こいつが目覚めなければ、終わり、か……」


 さも心配しているかのように、ルプスは魔女の白い髪をよけ、その頬をそっと撫でる。


 ———ほんのり温かいその肌に、ルプスはどこか心を揺り動かされる。

 今の今まで天涯孤独だったルプスに、初めてこのような仲間ができたから、だろうか。


「……俺は睡眠を取る。何か、外部に変化があったら……起こせるか?」


『少し動力を使いますが、電気ショックを流すことは可能です』


「おおぅ……少し怖いが、それで頼む。……じゃあ」


 それを最後に、ルプスの言葉は無くなってしまった。




 ……がしかし、魔女が起きることも、なかった。

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