攻略、KING

『我が同胞を葬ったのは……貴方ねぇ、白猫さぁんっ!!』


 その声と共に、ボスゴブリン———ゴブリンKINGの視線は、完全にアイドレに傾いた。


『敵、確実に注意が向いています。気をつけて下さい。何をしてくるか、まだ未知数です』


 イドの注意を聞きつつも、KINGの動向を伺うルプス。

 次に目にしたのは、異様な光景だった。


『アタシ……同胞のために……本気出すわよぉぉぉおおおっ!!!!』


 KINGの咆哮。その叫びと共に地が揺れ、




「何だ……この、魔力反応……っ?!」


 魔女が異様な反応を示すと共に、地面の下より這い出てきたのは———紫色の、数本に分かれた稲妻であった。


「まさか……魔洞地脈?」


「ルプス、なんだいソレは?」


 魔洞地脈。その言葉には、魔術関連に詳しい魔女ですらも、ルプスに詳細を聞かざるをえなかった。


「魔洞地脈が何かぁ?……みんな求めてる、最高のエネルギー源ってことだよ!


 どいつもこいつも、あんなインチキエネルギー如きに金を払っててなぁっ!」


 KINGが腕を振り上げると共に舞い上がるは、魔力で浮かされたと思しき岩の数々であった。


「ねえルプス、アレまさか……」


『魔力反応。岩石、数16———』


 アイドレのブースターは、既に起動していた。



『———来ます』


 瞬間より、宙に浮いた岩石は、アイドレ目掛けて迫り来る。


 その速さ、サイドツーのブースト以上。


「っ!」

「うわああっ!」


 がしかし、ルプスにとってそんな攻撃は見慣れていた。

 これまでの対人戦、高速で迫り来る敵の誘導グレネードを、彼は何回避けたことか。



「はあっ!……はあっ、当たって……ない……よかった……」


 安堵する魔女を横目にして、ルプスはそれまでの経験を思い出す。


 染み付いているはずだ、体に、心に、脳に。

 何せそうでないのならば、彼は既にこの世にはいないのだから。


「っ、おお!……ちょっと乱暴だけど、すごいじゃないかルプス! 全部避けるだなんて!」


「避けてやんなきゃこっちが死ぬんだよっっっっ!!」


 ……敵は沈黙。次の攻撃の準備をしているのか、その巨体は顔面を見せていなかった。


 少しの休憩時間。この落ち着いた時間にも、魔女はその頭をフルに回転させる。



 ———と言うのも、今の一瞬、魔女には違和感があったのだ。

 具体的に言うなれば、岩石を避けた一瞬、魔女の懐に


 その現象が、どうも不思議に思えて———、


「ルプス、避けながら聞いてほしい」

「何だ、早く言ってみろ」


「魔洞地脈のことについて、もう少し詳しくだ! 勝てる、勝機が少し見えてきたかもしれない……!」


「そうか……分かった。

 魔洞地脈……読んで字の如くかもしれんが、こいつは地下の洞穴に集積した魔力の地脈だ。


 故に、その『スポット』には、魔力が集結している。おそらくあそこもその1つだ」


 ルプスの説明を聞き終わった魔女の顔が、急に輝き出し……その後に、不適な笑みへと変わっていった。


「ルプス、いけるよ、僕たち。ついでに、キミのその状態も、少しは改善するかもしれない」


「……何だと?!」


 ———その情報は、退屈で死にそうだったルプスにとって最高の情報だった。


「分かったら、僕に協力するんだ!……信じる、信じない———そんなことを言ってる場合じゃない、今だけは協力する、それだけだ!」


「……相手がじゃなければ、だな。


 いいさ、勝手にしろ。俺は何をすればいい?」



「簡単だ、キミはヤツの攻撃を、すんでのところで回避すればいいだけ。そして、僕の合図が出たら、ヤツに可能な限り近づいてほしいんだ。






 ———1撃で、ヤツの魔力器官をブッ壊す」

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