ルプス、共闘?

◇◇◇◇◇◇◇◇


「相も変わらず……酷い状況だ」


 現場———と言われた場所は、森の中にあった、切り開かれた広場。



 広さは大体、直径で寝転んだサイドツー(18メートル)が5機入るほどには大きいものだったが———その中に、ゴブリンが敷き詰められていた。


『依頼は、このゴブリンたちの駆除だ。何せコイツら、放っておいたら畑にまで降りてきて、農作物を食っちまうらしいんでな、それで依頼主も困ってたんだ』


 ———よくある依頼の形式だった。

 

『———仕掛けるぞ』


 隠れていたサイドツー3機は一才に立ち上がり、



コンバット・オープン戦闘システム起動。戦闘モードへ移行します』



 ……そして攻防は始まった。


 ———が。


『……』


 誰もが黙々と作業をする中、銃声のみが広場を支配していた。


 銃弾に当たり、血を垂らしながら倒れていくゴブリンたちの死体をも踏み越えて、ラヴエル2機は進み続ける。



 ……そんな、中。



「……ルプス?」


 何かを気にし出した魔女が、ふとルプスに尋ねた。


「これ……僕のアイドレ、戦ってる?」


 返された答えは、魔女にとっては衝撃的なものだった。


「いいや?……今の今まで、銃弾の一発も使っていないが」


 ———この男、サボっていたのだ。



「おおおいい?!?! だっ……ダメじゃないかルプス! 依頼を受けたんだろぉ?! だったら……ん〜だったらサボるのはさぁ〜っっ」


 どこかヤキモキしている魔女。その姿を、冷たい目線で横に見ながら、ルプスは淡々と話し始める。


「……信用できないんだよ、アイツらも」

「またソレか。キミはほんっとに、誰も信じない。


 いい加減、この僕だけでも頼ればいいのにさ、キミは!」


「信じれるわけないだろ、見ず知らずの他人を。


 いつ、背中から撃ち殺されるか、分かったもんじゃねえ」


「……アホなの?……そんなこと、普通してこないでしょ」



 何気ない一言だった。



「されるんだよ。


 ———お前は、何も分かってない」



 その言葉を最後に、会話は終わった。



『なんだい、白炎の! お前サボる気か?……最低報酬しかもらえねーぞ、アンタ!』


「構わない。好きにやってもらって構わない。最低報酬でも、最低限の生活はやっていける」


「キッ……キミさぁ……最低限なんかでいいわけ?!」


 どうやら魔女は贅沢したいようである。何をする気なのだろうか、そんなに金を手に入れて。


「いい。構わない。養っていければ、それで十分だ。


 こんなヤツらに殺されるよりか、最低限でも金をもらえる方がよっぽどいい」


「いや、だから、疑いすぎだってば……」


 こうしてルプスがボーッと突っ立っている間にも、僚機のラヴエル2機は、淡々とゴブリンを殲滅し続けていた。



 ———この依頼は討伐依頼だ。報酬も3人分支払われる。


 しかし、その全体報酬の山分けは受注者同士でしなければならない。その山分けにも最低ラインがあり、それがさっきの『最低報酬』なのだが……



「……動き、なし……か……」

「ねえルプス、僕たちだって戦おうよ! 金を少しでも稼いで———」


「弾薬、燃料、推進剤、ミサイルが無駄になる。下手にやれば損失の方がデカくなるだろうな」


 報酬の山分けは、よく受注者同士で問題になりやすい事態だ。しかしこの場合、誰が一番少なく貰うかは皆が言わずとも把握していた。


「はあ……もう、ほんっとに……なんなんだよ……」


 それを、当の魔女も把握していたからこそ、このふてくされ具合だった。




『全匹討伐完了……依頼終了だな、戻るぞ!』


 そんなこんなで、もう既にゴブリンは完全にいなくなっていた。

 魔力反応———サイドツー3機以外、なし。完全に終わった任務、だった。

















 ———森の中より、巨大な足音が、鳴り響く。

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