(二)-4

 それはほとんど宗教の教義のような気もしなくはなかったが、とはいえ、彼女はそれを押しつけることもなく「手伝ってくれると嬉しいわ」と笑顔を向けてくるのであった。

 それ以来、私は月に二回ほど土日の週末にこの会の一員として街頭に立ち、募金活動という「善意をわけてもらう」活動をしている。


 しかし、もちろん当たり前のことではあるのだが、世の中には善意をもった人ばかりではない。

 この日、先の高齢の女性に続けて、高齢男性に声をかけた。黒いジャンパーを着たその男性は、老人というほどの年齢ではなく、しっかりとした足取りで私たちのすぐ目の前を通り過ぎようとしていたところだった。


(続く)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る