(二)-2

 その教祖である信濃丸大和が数年前に病死すると、宗教団体としての活動は雲散霧消してしまった。その後、信者と呼べるほど熱心に活動していたわけではないが、彼の人柄の良さを認めて活動をともにしていた千曲さんが、普通の慈善団体として会を引き継いだのだった。

 とはいえその口グセは、千曲さんが認めていたその教祖の言葉でもあった。その意味ではこの団体は宗教団体ともいえるかもしれない。しかし綾音ちゃんなどは教祖や新興宗教のこともまったく知らずに参加していたし、もちろん千曲さんには慈善活動をする気はあったが、既に亡くなった教祖が説いていた支離滅裂な教義を若い人などに教えたり広めたりする気はさらさらないようだった。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る