第19話 カナンVSククル 一

~ カナン ~


 手に持つ槍を流すように振りながら、ククルの大剣の猛攻を受け流す。

 高速で閃を描く大剣の刃に触れた場所から火花が迸る。

 全てが鉄で造られたこの槍だからこそ、まだ原型を留めていられるとも言える。


「ほらほらカナンちゃん! 守ってるだけじゃ終わらないわよ!」


 さっきは不覚を取った。

 ククルとジョンの二人を相手に、短剣一本は流石に無理だった。


 けど今は一対一だ。


「そらっ!」


 振り下ろされた大剣を槍で絡め取り、ククルの態勢を崩した。

 踏込み、突き出した石突で彼女の額を打つが、分厚い鉄板を叩いたような感触が返って来る。


「ハッハ―――! 無駄よ無駄!!」


 ククルの纏う防護術式を破るにはこの槍じゃ足りない。

 

―― 朱雲雀あけひばりがあれば。


 ククルが繰り出した左足を蹴って跳躍し、離れた場所に着地した。


「ふふ、ふふふふ。本当にやるわねカナンちゃん。魔法使いじゃなくて戦士職で登録してれば良かったのに。そうすればB級私部隊パーティーでも仲間にしたいって隊はあったでしょうね」

「余計なお世話だよ。ボクは剣が苦手なんだ」


 有り金をはたいて入った魔法学院はすぐに退学になった。冒険者になったけど、魔法使いの装備を整えたら短剣さえ買えなかった。

 その挙句が、裏切られてゴブリンに殺されそうになったという……。


 団の皆が知ったら怒られる、いや、殺されるかもしれない。


「それに今のボクは魔法使いだよ」


 亡き父の使った最高の魔法を手にするのがボクの望み。


 ……まあ、ボクに魔法使いの才能は無いみたいだけど。


 いやいや!


 努力すれば必ず、きっと!!


「そこいらの剣士なんて相手にならない腕なのにもったいないわ。でもほんと、生き方が下手よね~。まあだからこそ、この町に流れ着く羽目になったんでしょうけど」

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