ポリコレ配慮にも程が有る異世界に転生してしまった……/第1部:幻世篇

@HasumiChouji

プロローグ

DESTINY

というのも、学識ある学者がなんと言おうとも、人種というのは、政治的に言って、人間性の始まりではなくその終焉であり、民族の起源ではなくその腐朽であり、人間の自然な誕生ではなくその不自然な死だからである。

ハンナ・アレント「全体主義の起源」より


 ありがちだろ……いくら何でも。

 高校二年の僕が小学校高学年〜中一ぐらいにしか見えない……少なくとも僕より遥かに体が小さい子にカツアゲされた挙句、お金を持ってなかったんで、大型のカッターナイフで腹を何度も何度も何度も何度も刺されて……その後、記憶があやふやだけど……多分、死んだんだろう。

 で、全然、ありがちじゃない死に方をした結果が……ありがちな異世界転生。

 青い空。

 遠くには森や草原そして川。その川は城壁に囲まれた町を貫き、その町の周囲には畑らしいものが広がっていて……ボクは、その町に通じる道で意識を取り戻した。

 常識的に考えたら、こんなモノ着てたら、僕の体力だと絶対に動けない事確実な重さの金属鎧。背中には両手持ちらしい剣と弓矢が入った革の筒を背負っていて……腰には予備の武器らしい短剣。革製のブーツの側面には、更に予備の武器らしい投擲用の長くて太い針のようなモノが片足につき1つづつ。

 ありがち過ぎる……ナーロッパそのものだ。

 僕が着てる服や鎧のデザインも、生きてる時に親の顔より良く見たナーロッパそのもの。

 ……と思っていると……。

 町が有るのと反対側から……。

 パカッ、パカッ、パカッ。

 馬と……そして、えっ?

 馬に乗ってるのは……黒人の男1人と、東南アジア系っぽい女が1人。あとインド系か中東系っぽい顔の男が1人。

 って……ちょっと待て、何で、ナーロッパに、こんな人種が……?

 な……何だよ……この……過剰なポリコレ配慮した異世界は……って?

 その馬の後方には、手を縄で繋がれた……えっ? まさか……奴隷?

 その子供らしい人物はブルカみたいな黒い服で全身を隠されていて……肌が全く見えない。

 縄で繋れてる両手にも黒い手袋。

「うらぁ〜ッ‼」

「うらぁ〜ッ‼」

「うらぁ〜ッ‼」

「うらぁ〜ッ‼」

 その時、道の両脇の草叢くさむらから叫び声。

 いや、だから……この世界、何で、ここまでポリコレ配慮してんだよ?

 文明人っぽいのは有色人種ばかりで……蛮族は白人って……?

 馬に乗ってる3人組は……突如現われた垢だらけの白い肌にボロボロの服に錆だらけの刀や斧を手にした蛮族と戦いを始めた。

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