「 オカルト研究部員と幽霊部員の文化祭」ジャンル:現代ファンタジー『オカ研男子と幽霊部員の少し不思議なお話』

第10話「文化祭での出会い~原坂昌彦と幽霊部員」(公開日2023年10月6日 22:20)

 ◇登場人物紹介◇

 原坂昌彦

 中二の男子、オカ研部員。

 イメージイラスト・AI作成

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16817330664848448211


 金沢明子

 中三の女子、オカ研の幽霊部員。

 イメージイラスト・AI作成

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16817330664848558418


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 今日は、優乃丘やのおか中学校の文化祭の日。僕は、彼女に出会った。

 黒髪短髪、詰襟制服の二年生、原坂昌彦はらさかまさひこは、 オカルト研究会の研究員。

 様々な模擬店が出店する中、去年の通り、オカ研はお化け屋敷にすることにした。



 文化祭の当日、昌彦を始めオカルト研究会の面々は準備をしていた。

 昌彦がお化けのメイクをしようとしていると、教室の隅の方で体育座りをして顔を伏せている紺のセーラー服を来た、おさげ髪の茶色のフレームの眼鏡を掛けた小柄の少女がいた。



 彼は、席を立ち上がり少女に声を掛ける。

 腰をかがめて彼女を気遣った。

「ねえ、君。どうしたの?気分が良くないなら、保健室行く?」

 すると、少女は顔を上げ、びっくりしたような顔で昌彦を見た。



「えっ…ううん。大丈夫、それより、あなた…」

 彼女は、何かを聴こうとしたが、首を横に振ると昌彦を見やる。



「僕は、二年の原坂昌彦。君は」

「私は、三年の金沢明子かなさわあきこよ」

 お互いに、自己紹介をする。



 昌彦が他の部員を呼ぼうとすると、明子に制服を掴まれ、引き留められた。

 彼は振り返り、不思議そうな顔をする。

 すると、明子はうつむき言った。



「私ね…病弱で、一年からずっと、学校に来られなかったからここの幽霊部員なの。」



 昌彦は、一年から今まで、休みならどうして…と途中まで考えを巡らせたが、これ以上は無粋だなと考え直した。

「そっか…じゃあ、今日はせっかく来たんだし、文化祭を楽しんでってよ。なんなら、僕が案内するぜ?」




 ◇+◇+◇




 昌彦は、笑顔で明子を人で賑わう校内の模擬店へ連れ出した。

 昌彦と明子は、焼きそばやお好み焼きを食べたり、演劇部のロミオとジュリエットの劇を楽しんだりして、愉しく過ごしていく。執事、メイド喫茶にも入った。



「「お帰りなさいませ、おぼっちゃま、お嬢様」」

 昌彦達は、執事とメイドのコスプレをした、生徒達にもてなされる。

 二人は席に着き、コーヒーと紅茶を注文した。



 しばらく、話しているとメイドがコーヒーと紅茶を運んできた。

「お待たせしました」

 二人の前にコーヒーと紅茶が置かれる。

 昌彦がコーヒーを飲んでいると、明子が微笑みながら話して来た。





「今日は、ありがとう、原坂くん。とても、楽しかった。私、そろそろ」

「えっ、もう帰るの?オカ研のお化け屋敷は、まだ見てないじゃない。もう少し…」



 もう少しいてと、昌彦が伝えようとすると、明子は寂しそうにうつむく。

「私…もう、帰らなきゃ、だって時間が…」

「時間って、何か用事でもあるの」




 その時、学校の時計の秒針が三時の時刻をさした。

 時計のチャイムが鳴り響く



「ごめんなさい、もう」

 彼女は、はっとすると、席を立ちあがって急いで駆け出した。

「待ってよ、どうしたんだよ」



 その時、明子のポケットから可愛い、ゴーストのキーホルダーが転がり落ちた。

「あっ、これ」

 昌彦はキーホルダーを拾うとポケットに入れ、教室を飛び出すと明子を追いかけた。



 昌彦は、明子を見失わないように全速力で追いかける。

 しかし、明子も病弱の割には、足が速かった。




 ◇+◇+◇




 そのうちに彼女は、学校裏の秋桜の花壇の所で止まった。

 ほっとして、昌彦も明子に近寄る。

「これ、落としただろ?」

 


 昌彦は、ポケットからキーホルダーを取り出すと、明子に手渡そうとした。

 しかし、彼女は受け取らなかった。

「それ、原坂くんにあげる、私の大事なキーホルダーだけど。あなたに持っていて欲しいんだ。」


「いいの…?」

「うん、大切にしてね。」



「もう時間なの、行かなきゃ」

「無理にとは、言わないけど…これで、最後ってことにはならないんだろ?卒業までにはまた、学校来るんだろ。」



 昌彦は、必死に明子を繋ぎとめようとする。

「ううん…もうここには、来られないの。私は、遠くに行くことになったから。だからね、今日はほんとうに楽しかったし、とっても、嬉しかった」



 明子は、昌彦に近寄って頬に軽いキスをした。

「――原坂くん、ううん、昌彦くん…私、あなたのことが好きよ。昌彦くんとは、もう少し早く出会いたかったな…ありがとうね」

 明子の瞳から、ぽろぽろと大粒の涙が溢れ、頬を伝う。



「金…明子、僕も楽しかったよ、君のことが好きだ!」

 彼が、朱色に頬を染めて明子を見つめ、足の方に目を向けると、何と、彼女の膝から下が消えかけていた。



「君、やっぱり…」

「うん、私は幽霊だよ、一年の終わりに病気で死んだの。昌彦くんに会えて、ほんとうに良かった」

 明子は、うなずいた。



「僕も、明子に会えて良かった」

 昌彦が嗚咽おえつを漏らしながら、明子を抱きしめると、明子は幸せそうに微笑みながら、光の粒子ひかりのりゅうしになって天へと昇っていった。



「ありがとう、明子。忘れないよ」

 昌彦は、涙を流して雲間から、陽が差し込んでいる空を見上げた。



 

 休み明けに金沢明子は、入院をしている間も学校と文化祭にずっと、行きたがっていたと昌彦は担任から聞いた。



 -終わり-


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 お読み頂いてありがとうございます。

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