第11話

「皆さん、おひさです」


 狭い我が家の一角にて、配信を始める。


:おひさー

:1日ぶりだネ

:この時を待っていた

:ニヤニヤ


「えー、はい。今回、私の家から配信をしているんですが、なんでか分かりますか?」


:はい!分かりません!

:なんでやろなぁ

:全く心当たりがない

:うーん、分からんなあ


「分からないふりをしても無駄ですよ。温厚な私でも流石にブチギレそうです」


:んん〜、怖いねぇ

:ブチギレwwww

:自分のこと温厚っていうの草

:どしたん?話聞こか?w


「・・・・・・配信者杯2位ってどういうことですか?説明してください」


 ──配信者杯とは何か?

 簡潔に答えるならば、配信者の中で一番強いのは誰か、誰が一番人気か、というものを皆んなの投票で決めよう、という物だ。

 漫画とかのキャラ人気投票とかに似ているかもしれない。

 で、冒険者杯には二つの投票があって、先ほども述べたが一番強いのは誰か、と誰が一番人気か、という観点の投票がある。

 ちなみに、私が今2位なのは誰が一番人気か、という観点の投票だ。


:頑張った

:頑張ったから褒めて

:顔出しするって言ったから・・・・・・


「なるほど、頑張った、というのは分かった。でもさあ・・・・・・努力するべき方向間違ってるでしょ!!!」


:ネット民を舐めるなよw

:やめろ・・・・・・その言葉は俺に効くッ

:ニートの私にとってはいい暇つぶしでしたw

:確かにそれはそう


「本当に、ねえ?知ってるんだからね、私。君たちがcookiesとIP変えて複投票しまくってんの。まあ、それはともかく、ね?ロボット審査まで突破してるのなんなん?ねえ、なんでなん?」


 本当になんなん?って感じだ。

 ロボット審査とは何か?

 分からない人に向けて説明すると、ネットとかにおいて、ユーザー登録やサービスを受ける際において、ユーザーが人間かどうかチェックするシステムのことだ。

 なんでそんな事をする必要があるのか?と疑問になるかもしれないが、今回の件が分かりやすい。

 投票などで不正がないようにするために設けられるのだ。


 でもさ、この人たちそのロボット審査突破してるんだけど。

 意味が分からない。

 そんな所に本気出すなよクソニートども。


:脳ある鷹は爪を隠すのだよ

:我々の本気を見誤らないでもらいたい

:なんもやっとらん奴らがドヤ顔してんの草

:ロボット審査?なにそれ美味しいの?

:ヌルゲーだったぜ


「はあ、分かりましたよ。君たちの本気が。それで?私は悪目立ちしてフォロワー10万人になりましたとも。ネットで炎上しまくってますとも」


 現在、SNSは私のことで燃えまくっている。

 批判する意見もあれば、擁護するコメントもある。

 正直こうなることは予測していなかった。

 

「まあ、君たちは私の顔出しを望んでるんでしょ?ほら、お望み通り顔出ししてあげますよ」


:おお、キター!

:ktkr

:ようやく

:おおおおおおおおおおお!!!

:理解が早くて何よりもです

:ワクワクテカテカ

:どんな顔してるのかな?


 そして、おもむろに顔に被った仮面を取る。

 何かとんでもなくいけない事をしているような、していないような、不思議な感覚だった。

 でも、なんでだか分からないが、ようやく解放されたって感じで気持ちよくもあった。

 

:え?可愛くね?

:美少女やんけwwww

:ガチ恋しそう

:こんな人がハンマーぶん回してたの!?

:すげええええええ!

:めっちゃ可愛いやんけ


「可愛い、ですか。それは良かったです」


 私は、今まで特段自分が可愛いと思ったことはない。

 小柄で、まな板で、黒髪黒目の全然目立たない自分。

 それでも顔立ちはそこそこ整っている方だとは思っていたが、実際に言われると、なにかこそばゆいものだ。


「──それと、顔出しに加えて、実はこの配信で伝えたかったことがあります」


:ん?なに?

:これ以上なにかあるのか?

:危険な予感


「実は、私、A-1の9層ボスを討伐しようかと思ってて・・・・・・」


:は?

:はい?

:やばw

:まぢかよ

:RTAだけでは飽き足らなかったか

:オイオイ、オイオイ、あいつ死んだわ

:死に急いでる?

:正気か?


 まあ、やっぱそういう反応になるよな。

 予想は出来ていた。

 実際問題、S級冒険者の人たちですら未だに攻略できていないのだ。

 ぽっと出の私が行けるわけがないと思うのが世間一般的だろう。

 でも、やっぱり・・・・・・

 

「──楽しそうだな、って思ってしまいました。すいません、自分の欲望に勝てませんでした」


:戦闘狂だあ

:イカれてやがるwww

:人類には理解し難いゾ

:マジで言ってるの?

:可愛い顔してエグい感性なの草


「まあ、そういう訳でA-1に行くことになりました。って事で次の配信は特攻になりまーす。みんな楽しみにしててねー」


:楽しみにしてる

:死なないで

:特攻www


 そして、配信を切った。




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