すずめと米俵

西山智

第1話

 すずめがいる

 じっとしている。

 米俵を見つめている。

 米俵もじっとしている。


 米俵が飛び立った。


 電線に米俵がとまって金色に光った。


 すずめはじっとしている。


 米俵が、お米をばらまいた。

 すずめがそれをついばむために動いて食べた。

 唱歌を聞いている僕はその光景を楽しんでいる。


 米俵が言った。

 僕にお酒を飲め、と勧めた。

 僕は、ビールしか飲まない、そう言った。

 麦なら麦茶がいい。

 米俵の台詞はお金がかかっていた。

 そう、お金がかかっているのはすずめ。すずめは貴重な命。

 そのすずめはただのフィギュアだ。

 僕は反論した。

 米俵は黙った。


 すずめはまたじっとしている。


 米俵もじっとしている。


 僕もじっとしているうちに、滝に打たれている気分になった。


 現世はお金がかかっていく。


 僕はお金がない。


 すずめにお金がかかっていたなら僕は何者にも生まれ変われない。


 僕はまだ死ねない。


 悟りを開くしかない。


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