黒幕ゲーム_とある完全犯罪組織の秘密会議録

不知火翠

寝落ち(のない)通話

『もしもし、来都（らいと）さん』

「……不知火（しらぬい）？」

「どうした、こんな夜中に電話なんて」

『いえ、どうということもありませんが』

『もう寝るところでしたか？』

「ん……いや、明日は休みだからもう少し夜更かしするつもりだったけど」

『意外と不健康なんですね、来都さん』

『ただ、それなら好都合です。少し付き合ってください』

「え」

「付き合う……って」

『……色恋の意味ではありません』

『ただ、夜はとにかく暇なので……話し相手になってもらえないか、と』

「ああ……《不夜城（ミッドナイト）》の効果か」

「寝なくていい、っていうのは便利そうだけど、確かに暇を持て余しそうだな」

『光凛（ひかり）さまの護衛をするには欠かせない《才能（クラウン）》ですが、その通りです』

『…………』

『……何か、話のネタとかないですか？』

「俺が考えるのか」

「うーん……じゃあ、一条（いちじょう）さんの好きな食べ物予想大会とか、一条さんグッズの自慢大会とか、一条さん知識決定戦とか」

「どれがいい、不知火？」

『〝じゃあこれで〟とか言うと思ったんですか、来都さん……？』

『ちなみにそのラインナップなら、全部わたしが勝ちます』

『（どやぁ）』

「う……やるな、さすが一条さんの捕獲助手（サポーター）」

「だったら、逆に普通の雑談でもするか」

「明日の天気とか……明後日の天気とか」

『雑談、下手なんですか？』

「……今のは、確かに俺が悪いけど」

「なんていうか……正直に言うと、深夜に女子と電話するっていうシチュエーションがあんまりないから」

「普通にちょっと緊張してるんだよな」

『…………』

『来都さんに異性として見られているとは思っていませんでした』

『ただ……』

「ただ？」

『そういう意味では……わたしもちょっと、緊張しているのかもしれません』

『……あの』

『襲いに来ないでくださいね、来都さん？』