第2話

北ハンブル大陸の中央、10代続くブランデラ王国。


王国の歴史始まって以来の賢王と呼ばれたバースベルト・ブランデラが、突如として近隣諸国に攻め入り、計5カ国を支配下に置いたのが、今から15年ほど前のこと。


本来魔物を押しのけるために鍛錬を積んできた騎士や魔導士たちが、まさか人間にその刃を向けるとは、誰もが想像もしていなかった。

戦いと言えば魔物や野獣たちとの争いを指すものだったし、誰かを守り抜くことも、力を誇示することも、見知らぬ土地を開拓し領土を広げることも、戦いのすべては魔物を相手取ったものでしかなかったのに。


狩猟、討伐、掃討。作戦や行動の呼称がどれも当てはまらない。


これは明確な大量殺人だなんて叫んだのは、一体どこの誰だったのか。


人が人を殺す…それは支配の形としてあまりに自然なことなのだと気付くまでに数カ月。


そして、理解してからお互いが相手を殺し返すまではたった10日。

これはつまり、話し合いがまったくの無駄だと誰もが判断するまでの期間。


闘争だ。


戦禍だ。


戦争だ。


その理由はどこに。

賢王は答えない。


ただ朝焼けの真っ赤な空を睨みながら。

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