希望む念願成就

サイトリドリ

第1話

私はこの国に住むごく平凡な一般人、だからこそ私には怖い物がある。



「貴方はマトンに選ばれました」


機械人形に話しかけられた


「え、何?私のこと?」


「至急、オーマト局本部へのご同行を願います」


「私の番・・・ですか」



怖いこと、それは機械(社会の歯車)になることだ



オーマト局にて


「お座り下さい」


「は、はい」


「これを摂取した後、目を閉じて下さい

そうすれば、貴方の役割が決定します」


錆びた鉄を差し出された


「あのー、これを食べろって意味

なのでしょうか?」


「摂取してください」


「・・・」


「・・・」


私は息を呑んで鉄の塊を舐めた


ぺろっ


(舐めただけでも摂取したことになる・・・よね?)


「認証完了、貴方の役割が決定しました

ようこそ、"メンカ"へ」



"機械になる"、それはこの国特有のルールによって定められた人間の最終地点だ。


1.人間はウェアラブル端末を身につけなければならない。端末は常時解除してはならない。


2.国内の人間は国民総数のうち2割でなければならない。


尚、総数を超えた人数分は無作為に"フォンス"の配属になる。


3.人間は身体伝導率によってランク付けされる。


ランクA〜Eのうち最高伝導率を所持するランクAは"フォンス"に配属される。


主な内容はこんな感じだけど私にはよくわからない、フォンスってなんなんだろうね



血の水滴がコンクリートで囲まれた部屋の中で垂れている


ぽちゃん、ぽちゃん


「う、うーん・・・」


私は机に項垂れていた


「時間になりました。起動して下さい」


機械人形が歪な形を模した銃を取り出して

私に向かって弾丸を放った


ビチャッ


弾丸は私に命中して水風船のように弾け飛び、紅い液体が私の身体全体に粘りついていく


シュー


「・・・!」


私の体が、皮膚が溶けていく


「ア、アァァアゥアアァア!!!!痛ッタァァァアァア!!!!」


苦痛のあまり手足を暴れさせるも液体は皮膚に張り付いたまま離れず、椅子から立ち上がろうにも足が動かない。私の足は既に人の物ではなくなっていたのだ。


ベチャッ


片腕が落ちて、機械の腕が姿を現した


「オートマトランスオミクス、20%」


「ウァァアァアゥゥ・・・ゥ・・・」


「起動して下さい」


ビリッ、ビリビリッ


「アァァアゥアウアァァア!」


椅子に電気が走り、気絶仕掛けていた私に追い討ちが入る


ポタッ、ポタッ


地面にできた赤い池


グチャ、ベチャッ


肉体から落ちていく塊


「オートマトランスオミクス、60%」


それを観察し、数を数える機械


ビリッ、ビリビリビリッ


椅子から放たれる電流

この空間は今、地獄と化している


ベチャッ


融解していく体から目玉が飛び出した


パシャン!


目玉が破裂し、舞い散る


「オートマトランスオミクス、100%プロセスが完了しました。おめでとう御座います。貴方の役職は"実験体"です。おめでとう、おめでとう、おめでとう、おめでとう御座います。機械ポートの接続は完了しています。転移ゲートで直ちに移動して下さい」


「ア、アァア・・・ゥア・・・」


朦朧とする意識下で意思に関係なく動く私の体が鉄の扉を開き、一歩、また一歩とフラフラになりながらも扉の中の光り輝く淡い空間を目指して歩んでいた。


コツ、コツ、コツ


扉の先に鏡が見える。それ以外はぼやけて見えるのはなぜだろうか。


バタッ


激痛にもがき苦しんだ身体にガタが来たのか、それとも精神的に疲れきっていたのか、私は扉を抜けてすぐに倒れた。


だが、一瞬、ほんの一瞬だけ見えた。私が立っているはずの場所に機械人形がいたのだ。

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