第22話

 一方、ここは鳳翼学園。


 正確には武たちが存在しないはずの神社へ行った後、一週間の時が経った頃である。

 あの日曜日から、自衛隊が救援物資など何かの機材などを運ぶために幾度となく行き来していた。

 廊下の窓の外を麻生が一人寂しく見つめていた。


 きっと、武の身を案じているのだろう。

 だが、武は今のところ無事なのだ。


「いやー、みんな無事でなにより……というわけじゃないな」

 麻生は声のした方をハッとして振り返ったようだ。

 偉そうな一人の白衣姿の男が自衛隊の隊長に苦い顔を向けて話したのだ。その白衣の男はあの宮本博士である。他の研究員もなにやら機材を運んでいる自衛隊たちに指示をだしていた。

「怪我人は、訓練所の病室へ全員無事に運んだんだね? 後は雨と地球外生命体の龍だけか……」

「宮本博士。いつか、この雨が止むことはありますか?」

 自衛隊の隊長は若く田嶋という名の男で立派な体躯である。

「わからん……恐らくは人為的には絶対無理だろう……」

「……そうですか」

「あの、宮本博士。機材はこれで全部です」

 かなり細いと形容できる研究員が宮本博士に言ったのだ。

 二つの教室は、今や立派な研究施設と変わりない。

 麻生が何やらさっきから必死に聞き耳を立てていた。

 

 そんなことをしても、あまり意味がないのだが、辛いが麻生の気持ちを察すると、きっと今まで武の安否を身の裂けんばかりに心配していたのであろう。

「しかし、数人の学生たちは今のところ……どこへ行ったのやら? 海底で引っかかるかしないと、見つかるはずなのだし……」

宮本博士はそう、ぼそりと呟いた。    

「学生たちは、目下全力で捜索中です。龍がいるので、この近辺しか行けませんが。五機の小型潜水艦と三機のヘリで捜索をしています。本部に応援も要請していますし。宮本博士……あの龍はいったい何なんでしょうね?」

「龍か……この学園へと幾度も来ているのは……何故だろう……か? ともかく念の為にこれからも学生たちを探してくれたまえ。不思議なことが幾度も起きているから、それらを信じると、恐らく手遅れにはなっていないはずだが……」

 

 薄暗い廊下である。

 田嶋の顔は、時折岩のような固く険しい顔になる。

 何故だろう? もうすでに、学園の人々は助からないとでもいうのだろうか?

「あの龍には弾丸が鱗に当たって貫通しません。ですが、宮本博士の言う通り。そこは催涙弾が有効でした」

「……ああ、やはり生物なのでな」

「正直、それでもいつまで持つか……わからないのが現状です。残念です」

なるほど、龍の脅威が迫っているのか。

 私にはどうしようもない。

 宮本博士は麻生の方を見ていた。

 田嶋はきっと現状を嘆いているような顔だろうが、私は麻生と宮本博士の方を見る。

宮本博士は、さっきから麻生を気にかけていたのだろう。

「あの嬢ちゃんの身内……酷い怪我だってね。何か明るいニュースでもあればな……」

「命には別状はないですが。……明るいニュースですか? ないので正直歯がゆいです……」

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