第7話:ベビーのために。

ベビーとの暮らしが否応なしに始まって、ハグしろだの、チューしろだの

ねだられながら一週間が過ぎた。


一緒に暮らしていてベビーが言ったような恋人関係になる雰囲気には。

まだなってない。

ほとんどベビーの独りよがり。


それでもお互いのことも少しづつだけど理解しはじめていた。

ベビーは自分には正直でウソ偽りはない。

もじで素直で性格のいい子だと思った。

悪魔って言うと姑息で相手にスキがあったらつけいってくるってイメージじゃん。


ベビーを見てるときっとベビーのパパもママも素敵な両親なんだろうって思う。


でも、たまに見せるベビーの悲しそうな表情。

時々沈んだ顔をするベビー・・・向こうの世界でなにがったんだろう?

そのことについてベビーは好きだよって言ってくれた俺にも話そうとしなかった。

だけどそのことについて俺は無理には聞かなかった。


だいたいは想像がつくからね。

きっとベビーの世界ではドジで落ちこぼれな悪魔だったんだろう。

そのためベビーはイジメを受けたり罵声を浴びせられたり辛い思いを

しながら育ってきたに違いないんだ・・・。


人間の世界でもそれは共通する。


優しくしてやらないとな・・・暖かい気持ちでベビーを包んでやれるのは

今のところ俺だけだ・・・。

俺と暮らしてる以上・・・辛い思いはさせたくないし・・・。


それでも俺が仕事に行ってる間、ベビーはひとりだからな。

だからなんとか家にいてやれる方法はないものかと俺は考えた。


え?真剣に考えてるんだ俺、俺の性気を吸い取ろうとしてる女に・・・。

俺、ベビーを受け入れようとしたる?

情が湧いてきてるのか?

好きになってる?・・・俺、ベビーが・・・?


だって、俺を慕うような態度で甘えられると放っておけないんだよな。


ってことで独立して起業しようか?

それなら家にいてやれる。

ひとりの女の子のために、しかも相手は悪魔だぞ・・・仕事をやめてそこまでする?


俺の心はいつの間にかベビーに傾いていてベビーのために俺のできる

ことをしてやりたいって思うようになっていた。


つまり俺はベビーを愛しちゃったみたいだね。

一度そう思い始めたらベビーへの気持ちはもう止められない。


でも、この気持ちはまだ、しまっておこう。

俺の気持ちが絶対だって確信がないかぎり、ぬか喜びにさせちゃ可哀想だから。


つづく。

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