第4話 red letter day

次に目を開けると、世界はまだ赤いままだった。

たしかに明るい、けれど、赤い。

そう、燃えていた。

本能寺。

世界が、いや、この国が良くなる可能性を摘んだ最初の記念日。

僕は勇ましくナタを振り回したりはして居なかった。

逃げまどい、なんとか生きて再起を図れないかと。

褌いちまい。

熱い。

煙で目が開かない。

息苦しい。

光秀?

違うよ。

羽柴だ。

いつも歴史は勝者に改竄される。

皆一様に前半生は英雄、晩年は鬼畜。

それは次の権力者のイメージの為だよ。

儂は武烈と同じ様に生来の気違いとされるだろう。

それが証明する。

織田の世の正統性を。

あとは尻馬に乗る小物ばかり。

残念だ。

何故だかぼんやり先が見えるんだ。

遠い世の、ちっぽけな男の地獄が。

今生では伺い知れぬ、生き地獄が。

それはこうして儂を葬り、ただ繰り返す始まりを作った秀吉、貴様とその先の小物どもの小競り合いが作り出すもの。

もう儂は知らん。

勝手にするが良い。

意識が遠い。

目を閉じる。

赤い暗闇はいつもより少し明るかった。

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