6 忘れないよ。あなたのこと。絶対に忘れない。
忘れないよ。あなたのこと。絶対に忘れない。
咲は仁くんと二人でたくさんの買い物をして大きなリュックサックに荷物を詰め込んで夜の森の中に侵入する準備をした。
懐中電灯に防寒着。靴や手ぶくろ。ロープも持った。
「まあこんなところかな? 忘れもんはないよな」制服の上から準備を整えた仁くんが言う。
「大丈夫。問題ないよ」
同じように制服の上から準備をした咲が言う。
「はいらずの森か。ずっと入ってみたかったけどさ、いざ本当に入るとなると緊張するよな」仁くんが言う。
「一応地図もあるけど、役に立つかな?」咲は古いぼろぼろの地図を広げる。
「持っては行くけどさ、もう何百年前の地図だろ? あんまり当てにはできないよな」うーんと背伸びをしながら仁くんはいった。
「咲はさ。髪。伸ばしてるんだっけ?」
ヘルメットを(苦戦しながら)被っているときに仁くんが珍しいことを言った。
「仁くん。私の髪に興味ないでしょ?」咲は言う。
「走ってるときは髪纏めてるだろ? 今日はまとめないのか?」
「しないよ。したほうがいい?」自分の長い黒髪を触りながら咲は言う。
はいらずの森はとても不思議な森だった。なんて言えばいいのだろう? 違和感がある。『まるでこの森の中だけ時間が止まっている』かのようだった。
仁くんのアイデアで咲は仁くんと一緒にロープでお互いの体を巻いて繋げることで、真っ暗な森の中でなにがあってもお互いが離れ離れにならないようにしていた。(かっこ悪かったけど、安全が優先だった)
「不思議な森だね」
「ああ。動物の声が聞こえない。鳥も虫も鳴かないし、いない。変な森だな。まるで死者の国の中にでも迷い込んだみたいだ」懐中電灯で森を照らしながら慎重にゆっくりと歩いている仁くんが言った。
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