第170話 築地市場
地元のダンジョンは完全クリアして、嫁とも会って、やる事は全部やった。
今後はどうするか……?
……まあ、ダンジョン巡りかな。
今思えば、敵が強いオリジンダンジョンとエクストラダンジョンを巡るばかりで、景色がいいとかモンスターが面白い(?)とか、そういうダンジョンにはあまり足を運ばなかったな。
何か、発見があるかもしれない。
それに、ダンジョンを巡回すれば、それは「視察」という仕事になるだろう。……流石に俺も、そろそろ学んだぞ?俺のやることに意味がなくても、意味は後からついてくる、と。
今のところ、目標は、神になるために信仰を集めて、そして力を貯めること。
そのためには、たくさん食事し、たくさん殺し、たくさん目立たなくてはならない、と。
そういうことらしい……。
で、あるならば。
「行ってきます」
「「「「行ってらっしゃい!」」」」
全国のダンジョンを巡ってみようじゃないか。
そんな訳なので、俺は、とりあえず……。
飯が美味いと噂の、築地ダンジョンに行くことにした。
とはいえ、移動は今時、魔法で一瞬。
俺は視線だけで空間を切断して、「距離そのもの」を一時的に斬り伏せて、転移した。
……昔は、転移魔法は色々と規制がかかっていたのだが、今はどこに転移しても怒られなくなったな。いい時代になったもんだ。
で、来たぞ、築地。
異界としてダンジョンと半融合状態にある築地では、目の前にある東京湾ダンジョンから無限湧きする魚介モンスターを目の前でぶっ殺し、その肉を売る感じらしい。
『グオオオオオッ!!!!』
東京湾から突如現れる巨大タコ!タコスミではなく、闇属性魔法レーザービームを乱射しながら、音速を超える速度でタコ足を振り回している!
危ないな、仕留めるか……?
……おや?
「『天魔包丁』……、『三式』!!!!」
瞬間、マグロの解体とかに使う長包丁を構えた板前風のおじさんが宙を駆け抜け、巨大タコモンスターをバラバラに……いや違うわこれ、ちゃんと捌いている。
綺麗に腑分けされ、切り身となったタコを……。
「よっと!」「はっ!」「おらー!」
「「「「安いよ安いよー!」」」」
ハーフリング丁稚達がキャッチし、パッキングして、その場で売り始めた……。
無茶苦茶だなあ。
「おおっ!これはこれは、英雄殿ではありませんか!どうぞ、タコ刺しはいかがです?」
「ああ、貰おうか。いくらだ?」
「なんの!英雄殿から金など受け取れませぬ!ただ……、一手指南していただければと!!!」
うおっ、いきなり切りかかってきた。マジでやばいなこの国。
俺は指を動かして、『過去』を斬り、板前おじさんの刀……いや包丁?を切断したことにした。
『旦那さんがユーハバッハみたいなことできるようになって帰ってきた時は、流石の自分も声出たっす!』
……嫁の謎テレパシーを受信しながらも、武器破壊を知らぬ間にされていたと悟ったおじさんは、「参りました!!!」と叫びながら土下座してきた。やめてくれ……。
それはそれとして、タコ刺しは貰った。
「いやいやいやバカ美味い、バカ美味いなこれ何これ?」
「キラークラーケンですね。キリッとした魚介モンスターの新鮮な弾力と旨み、そして闇属性のねっとり感が堪らないと評判ですよ」
「へえ……、いくつか包んでもらえるか?嫁にも食わせてやりたい」
「ええ、もちろんです!」
素材の味が良過ぎてなあ……。
下手に調理するより、この新鮮さだと、そのまま刺身が一番美味いかも。
嫁のためのお土産を、空間を切断して作ったポケットに放り込み、時間を斬り伏せて停止させる。擬似クーラーボックスだ。
「おおっ、英雄様!こっちの発砲鮑もいけますよ!」
「なんの!ウチのモビーディックの唐揚げはたまらんですぞ!」
「いやいや、魔鯛の煮付けでしょうここは!ダンジョンショック前からここに店を構えている老舗のウチが〜……」
うおおおお、国民の皆さんが馬鹿ほどお土産をくれやがる。ありがてえな。
しかし……、折角のダンジョンなのに、戦っている板前達を見るだけで良いのかね。
……いや、良いのか。
どうせもう、ステータスはカンスト。
レベル上げや修練ではほぼ伸びない領域にまで来ている。
後はもう、神としての格を上げる他に、俺が成長する術はない。
技術的にも、俺は剣の『答え』を見た。もうこれ以上はない。
……戦っても、無駄なんだよな。
鈍らない程度にたまにダンジョンに潜って、後はこうして楽しく暮らした方がいい。
いや……、俺もな。最初は、死ぬまで無限に殺し合いができる!とウキウキだったよ、最初は。
だが、予想外なことに、全ての殺し合いで勝てちゃったんだよな。
いつかどこかで死ぬと思っていたんだがなあ……、なんか……、皆殺しにできちゃってえ……。
レイドボスとか自分のコピー体とか、色々な奴と戦ってきたが、勝てちゃうんだよな……。
俺は周りから天才だと言われるが、そういう認識はない。できて当然のことしかやっていないつもりだ。
だから誰でも、鍛えれば俺と同じくらいのことはできると、内心では思っていたんだが……、違うらしい。
実は、世の中の大半の人間には可能性などなく、どんなに頑張っても強くなれる到達点には限りがあるんだとか。
超越種(エクストリア)に転化しても、ステータスアップ系のポーションを飲みまくっても、到達できるところはそれぞれ違う……と。
俺は今まで、努力すれば努力するだけ強くなれた。
刀の使い方、拳の振るい方、一日習えば理解できた。
毎日、学業や遊びの合間に軽いトレーニングをするだけで、御影流の免許皆伝を得られた……。
俺はどうやら、おかしい存在らしい。
……まあ、気にしてはいないがな。そんなのもう、弱い奴が悪いので……。
「弾丸マグロ魚群だあああああ!!!!」
「うおおおお!防御結界を張れえええ!!!」
「陰陽師!陰陽師はいないか?!」
うおお、マグロがミサイルみたいな速度で空から突っ込んできて大爆発した!
……あれで寿司とか握ってもらえないかな?頼んでみるか!
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