第26話 機密漏洩

テレビをつける。


丁度、国会の様子が映し出されていた。


そこには、与党の菅原総理大臣に、野党の、倫舫とか言うババァが詰め寄っているシーンが。


『与党は、ダンジョンに眠る資源のことを隠して、自分達のみで独占するつもりなんですね?!』


『えー、ダンジョンは、大きな危険性がありまして、それを鑑みて……』


『こちら、ある筋からの情報ですが……、ダンジョンには、飲むとありとあらゆる病気や怪我が治る薬や、若返りの秘薬があるそうです!みなさん!これは与党の横暴です!市民にもダンジョンの解放を!!!』


おっ。


漏れた漏れた。


情報が漏れたな。


どこの下請けがお漏らししたのか、それは分からないが、どうせ日本の企業なのだ。


ポーションは、下請けが孫請けに、孫請け更に下に……、とたらい回しされたはずだ。


その過程で漏れたんだろう。


うちの名誉のために言っておくが、うちはちゃんと下請けに充分な金を渡したし、コンプライアンスもしっかり守れと言いつけてあるそうだ。


それでも漏れたってことは、孫請け以下の、コンプライアンスを守るだけの給料を貰ってない派遣やらバイトやらが、適当な仕事をやって情報を漏らしたんだろうな。


いや、それはいいんだ。


よくはねーけども。社会構造がね?


でも、孫請け以下の連中が情報をお漏らししてくれたのは助かる。


これで、与党の恨みの対象は、下請け以下のコンプライアンスを守らなかった底辺達になる。


俺達、指示した側の研究所は、「まさか、こんなことになるとは思ってもいませんでした!」みたいなツラしときゃOKだ。


だって、俺達は、下請けに依頼して、下請けに充分な報酬を払い、コンプライアンスを厳守させるように命じたんだよ。


でも、下請けが中抜きして、安い報酬で孫請けに仕事をたらい回しにしたのは、俺達、ダンジョン研究所の預かり知らぬところで行われたことだろ?


俺達には、何の責任もない。罪には問われない。


まあ……、もちろん、それが分かってて、あえて適当な仕事をやる下請けに話を持って行ったらしいんだがな!流石お袋だ。その性格の悪さ、ちゃんと俺にも遺伝してるぜ!


さて、菅原総理の反応はどうだ?


『そ、それは、まだ調査中で……』


おっと、弱みを突かれたって顔だ。


『調査中?!ダンジョンの発生からもう半年が過ぎようとしているんですよ?!自衛隊はどれだけ無能なのですか?!』


吠えるねぇ、ババア。


『そ、その言い方には問題があるかと……!自衛隊の方々も、今全力で……!』


『でも、結果が出なければ無意味ですよね?』


スゲェなこのババア。


自分が戦ってる訳でもないのにこの態度よ。


態度がデカ過ぎる。


『近いうちに必ず成果を……』


『ですから、もう半年過ぎると言っています!それに、この様々な秘薬を発見したのは、一民間企業だそうですよ?!自衛隊が民間企業より調査を進めていないのはどういうことなんですか?!納得のいく説明をお願いします!』


『えー……、そちらにつきましては、また後日に……』


『後日とはいつですか?!明確な発表を……』


とまあ、野党が暴れ回って、国会中継は終わった。




この国会中継の後に、情報漏らしはどんどん広まる。


ツブヤイターでは、自称『ポーションの治験に参加したアルバイター』が現れ、電子掲示板では、『ポーションの治験に参加したったwww』というスレが立った。


テレビでも、低俗なワイドショー番組で、無能なアナウンサーが嘘八百の勝手な憶測を並べ立てている。


『ミヤギ屋がニュースをお届け!どうも、司会の宮木です!今回はこの、ダンジョン!という訳ですが……、やはり、政府の責任がー……陰謀がー……』


クソ以下のゴシップ誌も、あることないこと好き放題に書き散らす。


『《菅原政権、失墜!》〜ダンジョン資源を独り占めか?!〜 週刊文秋』


それだけじゃなく、日本の株価も、前政権のレベルで乱降下。


安全な観光地である日本が、モンスターの潜む地獄であるかのように語られた。


肌の色くらいで他人を差別する欧米人達は、早速、差別意識を丸出しにして、日本はモンスターの国だ!などと言い始まっているらしい。


こうして世論は、『ダンジョンを一般人に公開すること』を強く望む方向に進んでいった。


そして今、四月上旬。


政府が、ダンジョンについての情報公開という名目で、会見を開いた……。




俺も当然、テレビを見た。


するとそこには……。


『『『『誰だ……?』』』』


あっ。


ソラが映っていた。


まず、菅原総理が挨拶をしてから、ソラについて話した。


『えー、今回の、ダンジョン、におきましては、我々は、ダンジョンをお作りになった方との接触に、成功いたしました。こちら、ダンジョンの創造主、明空命様です。明空命様に、どうしてダンジョンをお作りになられたのか、訊ねましょう』


宙に浮いてるソラが、スーッと移動して前に出て、マイクを掴んだ。


『やあ、日本人の諸君。私が明空命だよ。何故、私が日本にダンジョンを作ったのか……、それについて語らせてもらうよ』


と、いつもの、伊邪那岐大神に恩を受けた話をして……。


『……と言う訳で、私は、資源を得る場所たるダンジョンを作ったんだよ。しかし』


しかし?


『ダンジョンでは、モンスターと戦って、負ければ死ぬと言うところが難点だそうだね』


そりゃそうね。


俺はそうは思わないけどな。


戦って負けて、それで死んだなら仕方ねえだろ。


『私はこう見えて、戦いの神なんだけれど……、この国の、この時代の人間の諸君は、どうやら、勇猛果敢に戦って死ぬことは誉れではないそうだね。だから……』


だから?


『鍛えてほしいんだ。ダンジョンで死なないくらいに。……近日中に、ダンジョンの攻略者……《冒険者》を応募する。それまでに、人間の諸君らには、強くなってほしい』


へえ、なるほどな。


『それは単純な力の強さだけじゃない。体力、知力、精神力……。どれか一つだけでも、誰にも負けないと誇れるくらいに鍛え抜いて欲しいんだ。そうすれば、きっと、ダンジョンでも死なないで済む筈だからね』


ふむ、確かにそうだ。


例え、体力がある程度ダメでも、知力が高ければ魔法使いとしてやっていける。


逆に、知力がパーでも、体力があれば戦士になれる。


ダンジョンは四人から八人で挑めるんだから、別々の一芸特化をそれぞれ揃える感じで良いんじゃねえのかな。


俺みたいに、一人でなんでもできる奴になる必要はないだろ。


『まずは、政府が用意したテストを受けてもらうことになったよ。知力、知識、体力、武力、その他特技をそれぞれ測定し、どれか一科目で九十点を超えるか、平均点が五十点を超えるかすれば、冒険者として採用するそうだよ』


ほー?


どれかに特化するか、平均的に頑張るかの二択か。


『とりあえず、一次募集が上手くいったら、基準点を下げて更に募集するそうだよ。機会はあるから、とにかく努力してほしいな』


なるほどな。


そんな感じで、ソラが一通り話すと、マイクは菅原総理の元へ戻る……。







——————————

なんか各方面に喧嘩を売るような政治的な描写がこれからもちょいちょいありますが、作者は特に政治的な思想とかないです。


所詮は俺が暇つぶしに書いた与太話だと思って、肩と尻の力を抜いて読んでくださいね。

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