パーティ



 社長開催のパーティに、とうとう上司が来た。

 それはそれはもうるんるんのウキウキだった。


 半年近く誘われたいアピールを欠かさなかった努力が報われて何よりである。


 産後の嫁さんを無理に引っ張り出すのはどうかと思うが、まあ、お嫁ちゃんが了承しているなら良いんだろう。

 お嫁ちゃんは女優似だと評判の美貌で、パーティ参加者の奥様方にご挨拶をしていた。


 私はとても幸せです、と言葉にしなくても分かる程に魅力的な微笑みだった。

 男性陣はもちろんのこと、女性陣も、誘蛾灯に誘き寄せられる虫みたいにお嫁ちゃんの周りに集まり始めていた。


 みんな幸せのおこぼれを貰いたがっている。

 完璧な、瑕ひとつない幸せなどあり得ないと知っているから、それに近いものを示されると人間はバグる。


 そもそも旦那がアレの時点でなんも幸せじゃねーと思うが。

 正確には、バグらせておいた方が遥かに簡単に幸せになれるというだけだ。


 なるほどね。

 見つけたのか。


 社長の思想は、⭐︎⭐︎教とはなんら関わりのない、極めて気色悪い個人的な趣味である。

 つまり、このパーティに参加している方々は、ほとんど一切が手付かずである。


 ただまあ、そちらさんが良い狩場だと思っている此処は、言ってしまえば社長の縄張りなのである。


 つまりは、

 すげー怠いことになる、ということである。






「琴浪くん、あれなんとか出来る?」

「いやあ、私のような若輩者には厳しいかと……」

「そうかあ。琴浪くんみたいな優秀な人が我が社を離れるのは寂しいけれど仕方ないね」

「……課長の奥様だけなら私でもどうにかなるかとは思います」

「よろしくね」



 この世はクソ。

 いけ! 生肉! 100万ボルトだ!


 ほんとにやりそうだからやめとこうな。


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