第8話 た、退学……?
「…………お前は一体どれだけ問題を起こせば気が済むんだ?」
「……は、はは……そんなつもりでは……」
「何だって? もう一度言ってみろ」
「本当に申し訳ありません」
俺は街から生徒会に連行され、本日2度目となる生徒会長室で、絶賛ブチギレているアルベルトと相対していた。
隣ではセノンドールが俺を汚物を見る時の目で見ている。
いやぁ……やっぱり精霊と魔法って凄いな。
何でより上位の精霊と契約した方がいいって言われるかがよく分かったわ。
魔法が使えないのは勿論のこと、俺が魔力で体を強化したところで精霊がいないからか、その出力は同じ魔力量で体を強化した他の精霊使いに劣る。
何でも精霊と契約すると人間は精霊との間に繋がる『パス』と呼ばれる魔力のつながりによる影響で魔力の扱いや肉体の魔力親和度が劇的に上昇するらしい。
それはより長く親密な関係を築いたり、より上位の精霊と契約するほど上昇率は高くなるんだとか。
それらの情報から考えると……目の前のアルベルトは異次元の強さを持っていると言うことになる。
だって精霊王と契約しているらしいし、スレ民の誰かがお助けキャラの中の最強格とか言ってたもんな。
「———話を聞いているのか?」
「も、勿論です!」
俺が別のことを考えていたのを見抜いたのか、俺が否定してなお訝しげな視線を向けながら厳しい言葉(当たり前)を投げ掛けてくる。
「入学から僅か2日で呼び出しが3回……こんなことは前代未聞だ。幾ら貴様が過去一の難しさだった筆記試験で満点を叩き出した天才だとしても、流石に許容できる範囲を超えている。よって———貴様を退学とする」
で、ですよね〜〜……。
俺が逆の立場だったら絶対俺みたいな奴は即刻退学させてるもん。
どうやら彼は、乙女ゲーのみならず……様々なラノベやアニメ、ゲームなどに出てくる『コイツ頭狂ってんじゃないの?』って思わずイライラしてしまうような性根の腐った王子様ではないようだ。
寧ろ超マトモで頭のキレる人なんだろう。
まぁ罰せられる側からすれば厄介極まりない以外の何物でもないんだけどな。
「取り敢えず貴様は戻れ。退学届けはその内送る」
「は、はい……」
あーあ、結局退学か。
これでレティシアとの婚約の話も白紙になっただろうし……借金どうしよ。
てかそもそも生活をどうしよう。
どうせ退学者を雇ってくれる所なんてないし適当に爆弾売って生計立てようかな……。
あ、スレ民に教えて貰おう。
それが良い。
話の種くらいにはなるだろ。
俺が未来のことを考えながら頭を下げて生徒会長室を出ようとしたその時———言葉を遮るように扉が開く音が聞こえた。
それと同時に物凄く嫌な予感がして振り返れば……。
「———異議アリです、王子殿下」
俺の婚約者(仮)であるレティシアが扉の前に立っており、アルベルト達に向かって真っ向から反対意見を言い放った。
れ、レティシアさん??
何で授業中の貴女がここに?
怒涛の展開に呆ける俺を他所に、アルベルトが眉間に皺を寄せて口を開く。
「ほう……異議アリ、とはどういうことだ……?」
「その言葉通りです、王子殿下。私はアルトに罰を与えるべきではないと思います」
生徒会長で王子で精霊王の契約者……パッと思いつくだけで肩書き過多なアルベルトを相手に一切引かないレティシア。
そんな彼女は俺の方にチラッと目を向けると小さく笑みを浮かべて言った。
「ちょっと待ってなさい、アルト。私が絶対退学なんかさせないから」
……ヤバい、めちゃくちゃキュンと来ちゃったんだけど。
俺は取り敢えず男以上にカッコよく見えるレティシアに何度も頷いた。
「———つまり……アルトはお前の指示で学園を抜け出したと言いたいのか?」
「そういうことです、王子殿下」
アルベルトの鋭い眼光、セノンドールの懐疑的な視線の2つがレティシアを射抜く。
しかしそんな2人の威圧を諸共せずに彼女は一切怯ることなく言葉を返した。
そしてそんな3人の姿を見ながら……俺は感動していた。
す、すげぇ……これが良くアニメである貴族同士の腹の読み合いか……!
レティシアの言ったことは純度100%の嘘なのに全然嘘に感じねぇ!
ただ、こんなテンションMAXの俺とは裏腹に、アルベルト&セノンドールペアの追求は止まらない。
「それなら放課後でも良いはずだ。わざわざ授業中にした理由は? それとも急ぐ理由でもあったのか?」
「はい。明日の昼から私達1年生は魔法の授業があるのですが……現在入学した生徒の中で精霊と契約していない且つ魔法が使えないのは———アルトただ1人です」
え、マジ?
魔法が使えないの俺だけマ?
いやまぁこの学園自体エリートのみが入れる特別な学園……よく入れたな、俺。
改めて考えてみて、自分で自分に感心する俺など全く眼中にもないかの如く、討論は続く。
「そしてアルトの筆記試験が歴代1位という試験の結果を知っているのは生徒会メンバーのみ。他の生徒は誰も知りません。そうなると……」
「———アルト・バーサクが差別される対象となる、か……」
「その通りです、王子殿下。だから私は今日の朝にアルトに爆弾を売らせ、急いで精霊石を買ってくるように指示しました」
それが私の言い分です、と言い切ったレティシアがチラッと俺を見て、話を合わせろと目で訴えてくる。
へへっ、任せてくださいよ。
その場のノリに合わせて生きて来た人間ですからね、俺は。
俺は沈痛な面持ちで俯きながら、小さ過ぎて聞き取れない程ではない程度の声量で、まるで罪悪感でも感じているかのように話す。
「すいません、アルベルト王子殿下……。私がレティシア様を巻き込むと言うことは、私の家を潰すのと同義。ですので、全て自分がしたこととして……退学を甘んじで受け入れようとした次第です」
「……ふむ……確かに子爵家が公爵家の名前を出して仮に助かったとしても……その後は公爵家に潰されるのは確実だな」
いや確実なのかよ!?
やっぱり俺ら下級貴族が上級貴族と関わるもんじゃねぇな……。
俺は、あまりの上級貴族達の恐ろしさと下級貴族の圧倒的使い捨ての手駒感に内心震え上がる。
そんな俺に向けて、小さく頷いたアルベルトが告げた。
「確かにレティシアの言い分とお前の言葉にも一理ある。だから退学は無しとしてやる」
「や、やった———」
「———だが、校則違反の罰が何もないと言うことも出来ない。よって……明日の魔法授業までに精霊と契約が出来ていなければ、即刻退学とする。これ以上の譲歩は出来ん」
む、無理ゲーで草。
こちとら既に10回失敗してるんだよな。
ただ、ここで頷かなければ即刻退学となるので……どのみち俺の答えは1つ。
「……畏まりました、王子殿下」
「ふんっ、貴様はレティシアに感謝するんだな。と言うか……レティシアは何故それほどまでにそこの問題児の肩を持つ?」
あ、何かこの質問拙い気がしてき———。
「———だって私の婚約者ですから」
———お、遅かったかぁ……。
俺が嫌な予感を覚えた頃には既に、レティシアが少し自慢げに告げていた。
まるで時が止まったかのようにビシッと凍り付いた空気の中、俺はスレ民達に助けを求めた。
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます!!
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