第6話

受付場にやってきた無月むつきは、日本ギルド協会の看板美人受付嬢である赤絵あかえに対応してもらっていた。


「ギルド副長から無月さんのダンジョンワープの使用許可の件は伺っております! ヒムダス《HMDS》にアプリをインストール致しますので、こちらにお貸しください」


今でこそ冷静になってHMDSを操作している赤絵だが、無月が今日やってきた時はそれはもう心配と安心が混ざったような表情でダンジョンネストの帰還を喜んでいた。


無月も流石に少しだけ照れた様子で、赤絵に対して無事を報告していた。


赤絵の今までこんなにも過剰に個人のハンターを心配している姿を見たことがない、この受付場にいたハンターは様々な感情を視線に乗せて、同僚である周りの受付嬢たちは面白いネタができたと微笑ましそうに見ていた。


それはさておき。


特にトラブルもなくダンジョンワープを使用するのに必要なアプリのダウンロード完了を確認したのち、赤絵の案内で、1階の受付場から2階にある部屋の一つに大型の魔道具が設置されていた。


「うわぁ、デカいな」


「ふふ。初めてこの魔道具を見たハンターの皆様のほとんどの方は同じように驚かれますよ」


おおよそだが、高さ10メートル、横は20メートルと、普段の日常ではなかなかお目にかかれない、どれだけの技術と知恵、そしてお金がかかっているのかわかったものではない代物だ。


ダンジョンワープの動力源は、基本的にAレベルボスモンスターの魔石モンスターコアが使われており、使用者が正面にある大型のモニターから必要な魔力を注いで、HMDSにダウンロードしたアプリとリンクさせ、設定されているダンジョン付近に飛ぶという仕組みだ。


当然ながら、魔石も永久的に使える物ではない。


魔道具にもよるが、ダンジョンワープに関しては、1年周期で魔石の交換が行われている。


そして使用料がかかる。


Cレベルハンターは、片道100.000円。


Bレベルハンターは、片道100.0000円


ハンターレベルが上がるにつれて、金額も倍々に増えていく。


これだけを聞くと、公共交通機関や自家用車、それこそ適正ダンジョン近くに部屋を借りたりした方が、金銭的には負担は軽い。


しかしながら、Cレベルダンジョンからはセーフエリアと呼ばれる空間や、階層が存在している。


そういった場所にもダンジョンワープを設置していることで、毎回最初から入ダンする必要がなくなり、クエストやダンジョン攻略効率が大幅に上がるのだ。


だからこそ、ハンター達からはとても重宝されている。


Cレベルからが一端のハンターだという常識が通っているのは、このダンジョンワープの恩恵も確かにあった。


「ちなみに俺も100.000円を払わないと使えないんですか?」


「いえ! 無月さんはCレベルになるまでは片道10.000円で良いと言われています!」


ズムッと顔を近づけてきた赤絵が笑顔で言う。


「ダンジョンワープの使用権限すら特別扱いなのに、さらにお金まで割引してもらっても良いんですか?」


赤絵の勢いに思わず後退しながらも尋ねる。


「今回のダンジョンネストは、最低レベルのダンジョンで起こったのは事実です、が! 無月さんもご存知の通り、巻き込まれたら最後。適性より2レベル以上のモンスターが数千単位の群を率いて襲ってきます。本来なら生きて帰って来られないんです……」


「……それを俺の能力でひいらぎさんと秋澤あきざわさん含めて無傷で帰ってきた」


「そうです! 前代未聞ですよ! そんな訳で我々ギルド側としても、無月さんのような強力な能力を持っているハンターはなるはやで高レベルに上がって欲しいんです。いきなりポンっと高レベルに認定してしまうと他のハンターの方達に不満が溜まるのも否定できません。つまり! これは効率よく無月さんの実力でダンジョン攻略をガンガンしてもらう処置になってるんです」


後退した無月に向かってさらに距離を近づけた赤絵から、あらかたの説明とギルド協会の意図を知った無月は、10.000円を赤絵に手渡して、HMDSを操作して迷わずゴブリンダンジョンにワープ先を指定した。











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