第4話
「ニシシ、よ〜し! それじゃあクリシちゃんキック行くよー!」
クリシが『フリューゲル・フリーゲン』という無属性魔法を唱える。
この魔法は、具現化されたドラゴンの翼が背中に生えて空が飛べるようになる。
そして勢いよく空を駆けるクリシは、1番近くにいたハーピーに容赦ないドロップキックをぶちかます。
そのときクリシが着ているワンピースのスカートは、魔力操作によって捲れ上がることもなく、絶対領域を完成させていた。
吹っ飛ばされたハーピーが、周りにいたハーピーに弾丸の如く衝突し、巻き込まれたハーピー共々そのまま消滅する。
「『シュペルノヴァ』!」
今度は攻撃系統の無属性魔法で、絶大な魔力が圧縮されて、無属性の塊を複数放ち爆発させる。
過剰な量の弾幕により、瞬く間に残りのハーピーの命が散っていく。
それとほぼ同時に、地上ではオークの群れと対峙していたフレイアシエが、
「ガハハハッ! クリシは相変わらずはしゃいでんな! ……まぁ、俺は魔法を使うまでもねぇけどな」
肩に担いでいた、炎と鋼で形成された槍、『レーヴァテイン』をただ一閃真横に振るう。
その刹那、全てのオークは灼熱の炎に身を焦がす。
──秒殺だった。
使い魔たちの圧倒的な力量差に、ハーピーとオーガに避ける、防御する、カウンターを仕掛けるなどの選択肢をそもそも与えてはくれなかった。
……モンスターたちにとっては、痛みもなく消滅できたことが救いだったのかもしれない。
その光景を
ここにきた時とは違う意味でまた混乱していたのだ。
「……へ? 終わったの?」
ぽつりと秋澤が呟く。
ぱちぱちと軽く拍手をしながら自分の使い魔を労っている、魔力量が暴力的なまでに底が見えない男を、柊は静かに見つめたが、
「──助けてくれてありがとう。遅くなってしまったけど、私は柊琴音」
「あたしは秋澤茉莉! 助けてくれてありがとね!」
少しして感情が落ち着いてきた2人は、無月に感謝の言葉を口にして、自分の名前を伝える。
「どういたしましてだ。……俺は無月夜空、そしてハーピーを倒したのがクリシ、オーガを倒したのがフレイアシエ」
無月も自己紹介を通して、今回の功労者である使い魔の名前を伝える。
クリシたちも柊、秋澤と簡単に会話を終えて、無月は使い魔を戻し魔力解放を解く。
そして、3人は何事もなく元のダンジョンに帰ってきた。
──『ダンジョン都市』。
ダンジョンの存在が当たり前になっている現代では、世界各国にギルド協会が点在している。
そこには日本も例外ではなく、ダンジョン都市の中心にギルド協会本部がある。
そもそもダンジョン都市とは、東京のとある区域に複数のダンジョンが発生した際に、ハンター協会を中心とした都市が建設された。
今のところ日本にてダンジョンの存在が確認されているのは、このダンジョン都市のみである。
現在では、ダンジョンハンターを始めとした様々な人々が生活しており、柊と秋澤が通うハンター育成専門高等学校もこの都市にあった。
モンスターネストが発生した場合、それを目撃したハンターは速やかにヒムダスを使って、ギルド協会に緊急連絡しなければならない決まりがある。
つまりは、帰ってきた無月たちの周りには、元々いたハンター以外にも、ギルド協会の職員、ダンジョン&ハンターを専門にする
そこからは無月たちにとって怒涛の展開だった。
歴史上2回目、ダンジョンネストから帰還したという衝撃的な光景を目の当たりにした者たちの口から漏れ出し、数日の内には世界的ニュースとして世界を震撼させることになった。
しかしすぐさまギルド協会による
また、記者会見や黒い噂の絶えない研究機関などからのアクセスには、ギルド協会が矢面に立って事前に防いでくれたため、彼らに特別負担を強いられることもないでいた。
現に事件の翌日から柊と秋澤は普通に学校に登校している。
普段の無月は社交的ではあるものの、面倒事を嫌い、悪意ある者には容赦のない性格ではあるのだが、善意には素直だ。
色々と面倒事から守ってくれたギルド協会から、今回の出来事について話が聞きたいと打診があった際も、無月は快諾した。
──そして現在。
通称モンスターネスト事件から早数日、無月はギルド協会のギルド長室に足を運んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます