SF800字正拳突きn連発
紫陽_凛
雌雄同体の小人たち
1,ミギュレニア族 (お題:真っ赤な鳥居の下)
ミギュレニア族は六本の足を持ち八本の手を持つ小人である。体長は二十センチほど。彼らはカタツムリのように雌雄同体であり、二体でつがいとなる――すなわち六本の足のうち二本を、八本の手のうち四本をつがいの体に結びあう。この時二体ともがその小さな腹に卵を抱えることとなり、繁殖が終わった後はお互いに別の場所で卵を産む。
卵の場所は見つかってはならない。天敵が多い高い樹の上を避けて、じめじめした湿ったところに卵を産み付ける。ここもカタツムリと類似している。卵はわたしの右手の小指の爪くらいの大きさだ。丸くて、真珠のような輝きを持っている。触ると少しぷよぷよする。固く丸まったダンゴムシと比べるとよくわかる。ひどくやわらかな卵なので、破らないように注意されたし。
ミギュレニア族の肌の色は紫色を基調としたピンクや青であり、その服は葉を編んだような緑色であることが多い。私は彼らがどこからこの服を調達してくるのかを知らない。知らないが、観測されるミギュレニア族のほとんどがこの樹の葉で作ったような服を纏っている。彼らにとって服は防寒以外の役割を持たないので、夏になれば半裸のミギュレニア族を見ることができる。彼らは適温で、程よく湿った場所を好み、苔や虫を食べて暮らす。
しかし、ミギュレニア族は絶滅の危機に瀕している。車に轢かれたり、子供の悪戯で蹴り殺されたりするミギュレニア族が多くみられた23世紀、国ではミギュレニア族を絶滅危惧種と認定して、国の認定する保護区で養殖する試みがなされた。
しかしミギュレニア族は、保護区外でもほそぼそと生き続けているようなのだ。
事例の一つとして、日本、山口がある。長く連なる真っ赤な鳥居の下に、ミギュレニア族の親子を観光客一行が見かけた、という目撃情報がある。親子というからには、そこにミギュレニア族のコミュニティがあるはずだ。私は荷物をまとめ、日本・山口への飛行機に飛び乗った――。
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