第3話 百味ビーンズ

知人がユニバーサルスタジオに行ってきたらしい。

お土産をくれるというので、何かと思ったら、ハリーポッターで有名なあの「百味ビーンズ」であった。

美味しいのものからトンデモ味まで、多種多様な味が入っている。



ネタとしては面白い。

けどさ、けどさ、

なぜか箱の蓋のテープが開いているんだよ。





「いやぁ、食べかけで悪いけど、ものすごいマズくてさぁ。」




えぇえー???

マズくて食えなかった食べかけを、お土産って言って人に渡すの!?

しかも、マズかったって言いながら。


知人にとって、タカナシは一体どういう存在なんでしょうか。

ぜひ一度問うてみたいものだ。





しかし、もらってしまった以上、食べ物を粗末にするのも忍びない。

ゼリービーンズ自体は好きなのだ。




知人と別れてから、タカナシと百味ビーンズとの戦いが始まった。


選定ミスさえしなければ、おいしい味もある。確かもも味とか、綿菓子味なんかは普通にうまかった。(正式な名称は忘れた)


開けられた箱に入っていた、味と見た目が書いてある小さな紙切れを片手に、間違いのなさそうな色からおそるおそる食べていく。


微妙な色のやつがいくつかあって、時々ミスにより、オェッてなりながらもなんとか頑張った。



数日後。

うまいはずのビーンズをだいたい食べ切った。

残りは…




ミミズ味

はなくそ味

ゲロ味

草味(名前だけ見たらいけそうな気がするけど、地味にまずい。)



など。




うーん……

捨てられない性分のタカナシはしばらくゲロ味のビーンズに悩まされた。




そんな中、突如として救世主が現れた。

タカナシの父である。


遊びに来た母が、父ならきっと普通に食べるはずだと言って、百味ビーンズを持ち帰った。

「いや、でも、もう死ぬほどマズイやつしか残ってないよ」と念は押しておいた。



ちなみに父は、食べ物の味の違いに全く興味がない人だ。毎日ラーメンでも毎日そばでも平気で、スポーツドリンクを飲んだ後に「今のは水じゃなかったのか」と言い放つ。

どんなに美味いものを食べたところで、豚に真珠である。






夜、母から電話がかかってきた。




「ちょっと変わった味だったけどうまかった、って全部食べてたわ。」




…マジか。




父にこれほど感謝した日はない。










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