トテ子

双葉紫明

第1話

僕は知っている。

ようで、知らない。

トテ子は、便利な女。

外崎 晃子。

ノサキとルコを抜いた彼女の愛称、いや、仇名、いや、蔑称、かな。

高校時代から、彼女を知っている。

誰とでも、ヤッちゃうんだ。

公衆便所。

トテ子に近づくと、便所くせー。

ひそひそと。

なら、ヤるなよ。

それに、お前ら男だろ。

女の腐ったみたいに、陰口かよ。

9組の男子とは、殆どヤッちゃったみたい。

ていうか、365日24時間、学年問わず他校の生徒とも?

僕はそれで、彼女を蔑んだりしない。

ただ、そんな簡単な女であるらしい既成事実めいたものに欲情し、毎朝毎晩日課みたいにオナニーするだけ。

あ。

便所くせーのは、どっちだよ?

他の男子に向けてたそれは、違った。

いちばん便所くせーのは、他ならぬ僕だ。

それでもやめられない。

誰のものにもならない。

噂によると、中林君の自殺は、トテ子に深入りしたかららしい。

彼はトテ子を、自分だけのモノにしたかった。

痛いほどわかる。


僕は、トテ子が、好きなんだ。

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