アバター選択とチュートリアル
さて、なぜ俺がギャンブル三昧に身を落としたのか説明しよう。
これは遡ること、ゲームを始めた日のこと。
ゲームを開いた俺は、ピンクのもやもやの空間に放り出された。
人生初のVRの景色にキョロキョロしていると、まずはキャラクターネームを決めるようにと誘導された。
「そうだな…ここは昔のゲームの名前にでもしとくか」
ということで、俺が選んだキャラクターネームは「レイル」。小学校の時にやっていたゲームのユーザーネームから持ってきた。
ただ、どうして小学生時代の俺がこんな名前を付けていたのかはわからないし、今になってそれが思い浮かんだ理由も曖昧だ。
次に選択するのはキャラのアバター設定。
とはいっても、特にこだわりがあるわけでもないので適当にそれっぽいものを選ぶことにした。
ひととおり決めると、目の前に鏡が現れて自分の姿が浮かび上がった。青と黒のツートンヘアーに水色の瞳というリクエストがちゃんと反映されていて驚いた。顔も美形で体系も細マッチョに仕上がっており、なかなかグッドな見た目をしている。
「…まぁ、パンツ一丁なのを除けばなんだけど」
その後は役職の選択だ。どうやら服装は容姿と役職に合わせて決まるらしい。人間の尊厳を開始から奪うことは流石にしないようでよかった。
「剣士、戦士…おっ、魔法使いとかいいな。」
特にそれという理由もなく、即決で魔法使いを選択すると、確かにそれっぽい服が現れた。
『アバター設定が完了しました。それではDREAM DEELGの世界を存分にお楽しみください』
その言葉と共に視界は真っ白になり、俺は眠るように意識を手放した。
次に目覚めると、そこはどこかの町の中だった。
町は石の建造物にに囲まれたそこそこの発展具合で、イメージしていた自然豊かな田舎の村を超えてきたことに一人勝手に盛り上がる。
そして流石に人気ゲーム。いたるところに他のプレイヤーがいて、プレイヤー同士で話をしていたり、何かの店で買い物をしていたり、果てには喧嘩している輩まで確認できた。
「うわ、人だらけだ…ん?これは…」
手に持っていたのはチュートリアルと書かれた本。
せっかくいい技術を持ってるのに、こういうのはアナログなんだなと少し肩を落とす。
だがその予想はすぐに裏切られた。
『基本チュートリアルを開始します』
本を開いた途端、機械的な音声が流れて、目の前の景色が森の中に変わった。
「おー!?何が起こったかはよくわかんないけど、すげぇ!」
感激していると、目の前に木の杖とスライムが現れた。
『それでは、目の前の杖で敵を攻撃しましょう。その杖を敵に向けて振ってください。』
言われた通りに杖を手に取り、スライムに振り降ろすと、炎の玉が放たれた。それはスライムに命中して、ピンクの丸っこい体を真っ黒こげにした。
『敵を倒すと、お金と素材が落ちます。』
そう説明された後、景色が変化した。
今度は何かの店のようだ。露店と似たつくりの建物の中には、青黒い石のテーブルが1つだけぽつんと置いてあった。
『それではこの『装備屋』で装備を作りましょう。そこのテーブルの前でバッグを開いてください』
テーブルまで歩くと、目の前にバッグと書かれたボタンが出現し、手を伸ばして触れてみる。
開かれた欄には、お金とさっき手に入れたであろうスライムの素材が表示されていた。
『ではスライムのペンダントを作ります。』
欄からアイテムが消え、代わりに水色のペンダントが出てきた。
『装備のステータスを見てください』
「ステータス?」
スライムのペンダント
攻撃+10
体力+10
防御+5
素早さ+5
会心率+3%
「いろいろ書いてあるな…会心率?見たことないな、なんだこれ」
『はい。装備品をはじめとした様々な要素で付けられるステータスには攻撃、体力、防御、素早さからなる基礎ステータスと、会心率などの特殊ステータスがあります。例えば、会心率は当たった攻撃の火力が上昇する確率が増えます』
「面白そうだなそれ!」
『他にも有用な特殊ステータスがあるので探してみてください。それでは、最後の説明に参ります』
次にワープしたのは、掲示板が壁中に貼られたなんだか古そうな建物。
大きなカウンターやテーブルが置いてあって、酒場みたいな雰囲気も感じられるが、チュートリアルのためかひとっこひとり見受けられない。
『こちらはダンジョンギルド。ここでは、この世界のダンジョンの依頼を受けることができます。ダンジョン自体は依頼がなくても行くことができますが、依頼をこなすことでお礼として経験値やお金などの報酬を受け取ることができます』
つまり、この依頼とやらを受けることでよりスムーズに強くなれるということだ。
『では、これで基本チュートリアルを終了します』
「ああ、いろいろ教えてくれてありがとう!」
『…!いえ、ではあなたの物語の成功を願っています』
その音声と共に視界が暗転して、気づいたら再び最初のところに戻ってきていた。
「…確か、公式の情報だとレベル15からクランに入れるんだったな」
今の俺のレベルを確認すると、レベル1。当然ではあるが、目標のレベルには程遠い。
「よーし、早速ダンジョンでレベルアップだ!」
俺は威勢よく意気込んで、ダンジョンギルドに向かった。
この時はあんなことになるなんて知る由もない。
☆――――――――――――――――――――――☆
まだ健全
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ここまで読んでくれて本当にありがとうございました。
誤字脱字や辛口評価等も大歓迎です。
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