俺達は皆、共通したある事の達人だ
達人とは、ある分野に卓越した人のことを表す言葉だ。ある分野に達し、ステータスを全振りしてオーバーフロウしたということだ。そして生きとし生ける人類は、余すことなく「ある事の達人」である。
「あること? まさか人間として生きる事とか言うんじゃないだろうな? それとも呼吸とか食事睡眠とか、そんなバカなことをほざこうとしているんじゃないだろうな?」
という、数少ない文句が聞こえる。しかしそんなことは言わないさ。言ってあげない。言うもんか。何故ならば、お前らは、そして僕は、人間として生きることよりも、鼻から空気を吸って口から吐く腹式呼吸よりも、適度な食事や睡眠よりも、あることに卓越しているのだから。
それは、「言い訳」だ。
今は目標達成のための準備期間だから。
また明日頑張ればいいから。
今日はちょっと寝不足だから。
最近秋だからいっぱい食べ過ぎちゃって。
ドーナツはゼロの形をしているからゼロカロリーだよね。
人は、自分が苦しみから逃れるためならどんな苦労も厭わない。精神的健康のためならばいつでも身を投げる「言い訳」の強者ばかりだ。好きこそものの上手なれとはよく言ったものである。そりゃそうだろう、人間は自分が一番大好きなんだから。自分のためならば何だってやる。未来だって容易に食いつぶしてみせる。ドーナツだっていくらでも食いつぶしてみせる。
しかし、言い訳は皆が得意だ。つまりはレッドオーシャン。そんな真っ赤な海に飛び込んでいては、沈んでしまえば、皆が皆血で血をなめ合う屍山血河の一部になってしまう。既に僕は両足突っ込んだ田んぼ農家状態だ。
だからって自分を嫌いになれとは言わない。好きでいい、けど好きな人が望むことばかりを与えてはだめだ。好きだからこそ、時には鞭を打って立ち上がらせなければならない時がある。
さぁ、今すぐ言い訳の黒帯をほどくんだ。そして精一杯岸を目指して歩き出せ。最初は足が重くて、痛くて、岸の遠さに絶望するかもしれない。けれど、一度出ることができたなら、空には真っ青は世界が広がっていはずだ。
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