第4話

もう会えるかわからないから、お手紙書きます。


わたしのたったひとりの旦那さま。

もうすぐ、ふたりの子供が産まれます。

男の子。

あなたは、男の子にショオンって名付けたがっていたわね。

渚の音で、しょ、おん。

女の子なら、凪ちゃん。

お水が苦手なのに、どうして?

可笑しい。


あなたのゲージュツをわかった気がしてたのに。

あれから、あなたは連絡くれない。

この手紙だって、ちゃんと届くのかしら?

わたしね、あなたと入籍して奥さんになって、辛かった。

あなたが自分しか愛せないって、そんな気持ちになって。

わたしだって、そうだなって。

みんな、世界中がそうかもしれないって。

だから、仕方ないかも、って。


喧嘩して、お別れする事を決めてから、あなたはあなたじゃなくなっちゃった。

そうして、いつの間にかケッコン前に戻って、リコン届に署名してから、たくさん泣いちゃった。

わたしを見てるのが、わかった。

愛されてると思った。

たくさんたくさん、愛しあって、幸せだった。

あの時の子供だよ。


名前は少し変えちゃった。

実はあなたから連絡がなくなって、この子がわかって、あの時のあなたみたいに、わたしもなっちゃったの。

海が、砂糖水だったら良いなって。

でも、あの時、やっぱりしょっぱかったよ。

あなたの汗に抱かれてる様で、そこから知らないひとに助けられて、目が覚めた。


苗字をあなたののままにしておいて、良かったわ。


命名 佐藤 潮 

うしおくんだよ。


しょおんとは少し違うけど、いい名前でしょ?

わたしたち、きっと愛しあったままお別れしたから。


きっとこの子が、ちゃんと幸せになってくれるよ。

いえ、わたしが絶対そうするわ。


またわたしのゲンジツは忙しくなるけど、わたしたちカゾク3人は、ゲージュツだよ。

あなたが、作った。


お酒、飲みすぎないでね。

誰も頼る人が居なくなったら、いつでも連絡ください。

あなたが、辛くなくなる事を、いつも祈ってます。


ずっと、あなたの奥さんだからね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る