ギャルにフラれて陰キャになった俺の前に純真な天使が現れた

uruu

プロローグ 朋美との別れ

「朋美、話って何だ?。そして、その人は誰だ?」


 高校1年、夏休み直前の放課後。俺、中里蒼なかざとあおは恋人である佐々木朋美ささきともみに体育館裏に呼び出されていた。佐々木朋美はいわゆるギャルっぽいやつだ。俺は彼女から告白され、恋人になった。


あお、ごめん。別れて欲しいんだ」


「え?」


 朋美ともみはいつものように棒付きキャンディーをくわえたまま言った。

 こんなときでもこいつは自然体だ。


「私、この人のことを好きになっちゃった」


「はぁ?」


「中里君、俺は3年の山口大地やまぐちだいちだ。すまない、俺と朋美はもうそういう関係なんだ」


 朋美の隣には先輩がいた。俺も背が高い方だが、さらに先輩は高い。おそらく体育会系か。見たことがあるような気もする。俺はそいつを無視して朋美に言う。


「いや、朋美。お前は俺の彼女だよな?」


「だから、別れて欲しいって。蒼よりも先輩を好きになったってこと」


「……そういうことか」


「ほんと、ごめんね」


 俺はそう言う朋美をじっくりと見た。ふむ。


「わかった。要するに……ドッキリだな」


「え?」


「もう、いいぞ。いやぁ、騙されるところだった。先輩、すみませんね、こんな茶番に付き合わせて」


 俺はこれがドッキリだと見抜いた。よく見たらこの先輩はサッカー部だ。俺の友人の伊藤健司いとうけんじに頼まれたんだろう。それに朋美のギャル仲間が『嘘コク』をしたという話を聞いたことがある。これはその逆バージョンだろう。


「ごめん、マジだから」

「中里君、これはマジなんだ」


「は? マジ?」


「うん、マジ」

「そうだ、マジだ」


 朋美の顔と先輩の顔を見る。あれ? ドッキリ……じゃ無い?


 最近の朋美とのことを思い出してみた。学校の外では……勉強会以来会ってないな。メッセージのやりとりは……用件のみ。放課後は……用事があると言われて俺一人で帰っていた。


 少し前から先輩と浮気していた、ということか。

 俺はようやく現実を受け入れた。


「あー、マジなやつの方ね。いや、分かってたし」


「わかってくれた?」


「わかった、わかった。……じゃあ、これでもうお前とは終わりか」


「うん、今までありがと」


 こんな場面でも朋美はキャンディーをくわえたままだった。


「……じゃあな」


 俺は朋美に背を向けて、片手を挙げながら、そう言って立ち去った。


 こうして、俺と佐々木朋美との交際は3ヶ月であっさりと終わった。

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